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KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
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コメ欄を閉じていますので、ご意見、ご感想、ご連絡などございましたら、こちらまでお願いいたします。

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KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


   インデックス・作品紹介
  初めてのお方はどうぞ。このブログ内の小説ラインナップが一目でわかります。


  キャラ紹介
  小説のキャラ紹介です。「100の質問!」コーナーもあります。お時間のある方はぜひ


  KIKI歌野の日記
  皆様へのお知らせとかお礼とか言い訳とか、いろいろ書いてあります。


  ツイッター
  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



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天敵とあと一秒のキスを(7)
「あっ・・あぁ」
 突然の攻撃に香枝の背中がぐうっとのけぞる。揉まれ続け、発熱したように乳房が熱くなる。直己の片腕が香枝の太股を高く持ち上げ、背後の自分の脚に絡ませた。身体が捩じられ股関節がギシギシと悲鳴をあげる。直己は前に手を回し、指で香枝の中を激しく掻きまわした。愛撫というより、指で犯されている。グチュグチュ・・と耳を塞ぎたくなるような音が自分の鼓膜に届く。
「あ・・ああ・・はぁっ・・」
 今度はやめないで。香枝はそう懇願したかった。また中断されたら気が狂うかもしれない。
「このまま、後ろから入れたい」
 直己が熱い息とともに囁いた。後ろからなんて嫌、と反射的に首を振る。今だって直己に触りたくてたまらないのに。
「すぐ体位変えるから・・やらせて。後ろから」
 やらせて、と囁いた声はめまいがするほど卑猥だった。腰を強引に持ち上げられ、直己の眼の前でありえない姿態をとらされる。全部見られている。振り向かなくても、直己の視線が香枝の秘部に落ちているのがわかる。恥ずかしさに香枝の全身に鳥肌がたった。
「スゲーいい光景・・」
 直己は独り言のように低く言うと香枝の背中にキスをし、溢れた裂け目を一気に奥まで貫いた。最初から容赦なく突き上げてくる。
「ゃああっ!・・ああっ!」
 粘膜に与えられた強烈な刺激に悲鳴が迸る。抑えるすべはなく、香枝は高い頂きまで押し上げられた。ジェットコースター並みの早さで、膨れ上がっていた欲情が加速する。
「直己・・お願い、前から・・ああ、あんんっ!」
 香枝は1分もたたないうちに、高い喘ぎ声とともにイッてしまった。体の中心からドクドクと欲望が溢れ、水泡のように消えていく。彼を抱きしめられないもどかしさにシーツを掴む。直己は香枝の体を仰向かせると、いったん抜いたペニスをまた挿入した。体をぴったり密着させて香枝に温かい肌を与える。香枝は安堵して両腕を彼の背中に回した。
「お前、イクの早過ぎ・・」
「キスして・・」
 笑みを浮かべた直己はその通りにしてくれた。チュッと可愛らしい音をたて、何度もキスをする。まだ満たされない欲望に息を弾ませた直己は、ゆるやかに動いている。自身に快楽を与えるためと、香枝を再び昂らせるために。
 あたしってこんなにエッチな女だったんだろうかと、香枝はぼんやりと思っていた。イッたばかりなのに直己のものが気持ちいい。身体の奥が勝手に彼を抱きしめ、締めつけようとする。直己に抱かれていると「女にされる」感じがする。男性に貫かれて儚い声をあげる太古からの女そのものに。
「は・・ぁ・・・」
「気持ちいい?」
 技巧的に動きながら直己は聞いた。からかう響きはなく、優しかった。香枝は直己にあわせて腰を動かしながら、陶然と微笑んだ。
「気持ちいい・・すごく・・」
「俺も。心地いい。めちゃくちゃ・・」
 直己は体位を変えては香枝を攻め続けた。香枝という女を味わいつくそうとしているのがわかる。技巧が過ぎて厭味になることもなく、欲望の手綱を的確にあやつる御者のようだった。
「あんっ、あっ、あっ! あ・・」
「・・イキそう?」
「イキ・・そう・・直己は・・んっ」
「これ以上我慢したら、毛穴から精液が、出そう・・」
 息を切らせながら、情けなさそうに笑う。
スピードをあげ、小刻みなラストの動きに入った。香枝の喘ぎも小刻みに揺れる。脚の間から広がった快楽が全身を染め上げる。香枝の上で荒い息をつく直己にしがみついた。
「はんっ、あ、あ、あ! イッちゃう、もうイッちゃう・・」
「俺も・・あっ・・く・・」
「あっ・・」
 香枝の最後の叫びは小さかった。脳細胞が破壊された。このまま死んでしまうのかも・・うっすらとそう思った。ほぼ同時に直己は下半身を浮かせ、香枝の肋骨の間のくぼみに射精した。
 数分後、直己に抱かれながら、香枝は気絶のような眠りに落ちていった。
「お前・・・なんでこんな可愛いわけ?」
 耳元で彼の呟きを聞いたような気がするが、定かではなかった。



 月曜日、香枝は3冊分のファイルの中身を詰めた脳みそを揺らさないように地下鉄の駅まで歩いた。
 直己とは昨日の夕方までずっと一緒だった。
 直己は香枝がファイルに集中している間は声をかけず、疑問点を指摘すると的確な説明をした。「お前のアンテナを使え。資料は叩き台にしろ」と言った。彼が香枝の部屋であぐらをかいてコーヒーを飲んだり、デリバリーのピザや、香枝がチャチャッとつくった焼うどんを当たり前のように食べている光景が不思議だった。
 直己が帰ると、密閉性の高いマンションにスキマ風が吹くような寒さをおぼえた。天敵だった男への想いは1秒ごとに大きくなる。職場で何食わぬ態度を装う自信はなかった。
 だが会社に着くと戦場のような忙しさが待っていた。十分おきに鳴る会社貸与の携帯、増殖する未読メール。目をざっと通しただけで把握しなければならない資料の数々。会議、また次の会議。
 午後4時、香枝は昼食後初めてのトイレに行った。我慢しすぎだ。これでは膀胱炎を患う日も遠くはないかもしれない。直己とは一度も顔をあわせていない。席が離れているうえに、各デスクはパーテーョンで囲われているため他人の動向が見えにくいレイアウトなのだ。だがホワイトボードには何も書かれていないから出社はしているはずだ。
「いや今日は無理。先約あるし」
 トイレで手を洗っていると、外の廊下から男の声が聞こえてきた。心臓が跳ねる。直己の声だ。
「・・だよ。決まってんじゃん。」
 相手の声は聞こえない。誰かと携帯で話しているのだ。
「今日の夜はカノジョが家に来んの。そーだよ。俺のカノジョだよ。悪いかよ?・・・ダメだって。前々からの約束だからさ」
 電話を切ったらしく声が途切れた。立ち去ったかどうかはわからない。廊下は絨毯敷きなので足音がしないのだ。
 香枝は洗った手を拭いもせずに、ぼーっと立っていた。香枝は直己の部屋に呼ばれてはいない。つまり「大切なカノジョ」とは別の女のことだ。例の「真美」か。それとも・・・。
(やばいあたし・・・立って、いられない)
 脚が震え、香枝はトイレの床にずるずるとへたり込んだ。

 5時からのミーティングは、直己と香枝、香枝のサブにつく2人で行われた。香枝は自分が何を喋ったのか後から思い出すことができなかった。やむなく直己の顔を見る必要が生じた場合は感情のシャッターを閉ざした。ミーティングは30分ほどで終わったので、香枝は素早く会議室を出ると、自分のデスクを片づけて帰り支度を始めた。
 デスクの上の会社携帯が鳴った。直己の会社携帯からだ。香枝はバッグを肩にかけ携帯を握ると、のろのろと廊下に移動しながら応対した。
「・・はい」
「籾山、なんだよお前さっきの態度は。あれでリーダーできると思ってんの?」
 低いが怒りを押し殺した声だ。
「あんたが悪い」
 香枝は瞬時に、だが機械的に言い返した。
「はあ?」
「あたしが・・あたしがそーゆー器用な女だって思った? 公私カンペキに使い分けられるヤツだって思ってたの? だったら買いかぶりすぎだよ」
「んだよそれ。意味わかんねー。俺は仕事の話してんだよ」
「あんた彼女いるんでしょ。今日部屋に来るんだよね?さっき電話で話してんの聞いた。聞くつもりじゃなかったけど聞こえてきた」
「え」
「もうあたしにかまわないで。それ約束すんならちゃんと仕事するから!」
 電話を切り、震える指で電源も切ると携帯を握りしめた。泣くもんかと歯を食いしばった。エレベーターで1階まで下り、ビルの正面玄関を出て早足で歩いていると「香枝!」と背後から呼ばれた。振り向かずに足を速めた。今は下の名前か。プライベートモードなわけですね、とひねくれて考える。
 腕を掴まれて振り向かされた。意地になって振りほどく。また掴まれる。直己は走ってきたらしく息が荒い。
「今日会うのは犬! 動物!」
「へっ?」
 香枝の下顎が落ちた。
「だからさー、実家の妹が泊まりに来んの。ウチのチワワ連れて。これがもー超超超可愛いの! 俺はメロメロでケータイの待ち受けにしてるくらいなの! だから『お前のカノジョ』ってあちこちでからかわれてんの! ドン引きされるとやだから言いたくなかったけど以上!!」
 直己はハーッと息をついた。香枝は言葉も出ず、汗の浮かんだ直己の額を見つめた。
「これな」
 ジャケットのポケットから取り出したプライベート携帯の画面には、愛くるしい白い犬の画像がある。
「・・・可愛いね」
 香枝はボソッと感想を言った。
「もっと可愛い画像もある」
 直己は携帯を操作すると、また画面を見せた。黒いソファーで寝ている女の画像だ。ファイルを枕にして気持ち良さそうに口を開けて眠っている。
「盗撮した」
「・・・」
「ずっと前からこのコが本命だった・・・死ぬほど嫌われてたけど」
 直己は目を伏せて笑みを浮かべた。なんだかなめらかさのない笑い方だった。おもちゃ箱がひっくり返った床のように香枝の頭は混乱していた。だが衝動的に直己の首に抱きつき、「もーバカ!」と言った。
「お前だろバカは。会社の近所で抱きつくな」
「だって」
「でもま、隠したってすぐにバレるな。あいつら情報網が凄いから。特にマーケの奴らは」
 直己の会社携帯が鳴った。「っだよ」と舌打ちしながら応対した直己は、短い会話の後「戻んなきゃ」と言った。
「どうしたの?」
「トラブル。お前も来い。籾山香枝」
 今度はフルネームか!
 切なさと可笑しさに同時に襲われ、香枝は少し笑った。4月の少し冷たい夕風が香枝の額を、首筋を駆け抜ける。どこからか甘い花の香りが一瞬だけ漂い、流れ去っていく。
「好き」
と香枝は言った。
「あたし好きになった、宇田川直己のこと」
「そ?」
 変にそっけない返事をして直己は踵を返し、先に歩きだした。無言のまま会社のビルの中に入っていく。ピンと来るものがあり、後ろから追いかけた香枝は、2人きりでエレベーターに乗り込むと直己に身を寄せ、わざと女っぽい声を出してみた。
「大好き・・」
「わかった」
「恥ずかしそうだね」
「黙れ」
 弱点を見つけた。からかうのは大の得意技だが、女に素直に出られると弱いのだ。きっとそうだ。香枝はこらえきれずに笑いだしたが、憤懣顔の直己に顎を掴まれてキスをされたので、腹筋だけで残りの笑いを消化した。
 エレベーターのドアが開くまでキスをしよう。大好きな人とキスをしよう。ドアが開けば戦場が待っている。だからこの数秒を味わいつくすんだ・・・香枝はそう思い、残りあと1秒のキスに耽溺するために目を閉じた。



(おわり)




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天敵とあと一秒のキスを(6)
 駅前のカフェで簡単な朝食を摂った。宇田川と向かいあってものを食べるのは初めてだ。そもそもお茶や食事やお酒よりセックスが先だったのも初めての経験だ。宇田川は清潔な食べ方をする。サンドイッチのかぶりつき方は豪快だが、咀嚼するときは口の中を一切見せず、飲み込むまで話もしない。
(困ったなー。いちいち好きなんですけど・・)
 宇田川の携帯がメール着信の音を立てた。パンツのポケットから取り出してチェックした彼の顔が、ほんの一瞬だが笑みに崩れた。香枝はメール送信者の「真美」という表示を素早く見てとった。
「女の名前だね」
 とつっこむと、しれっと「妹」と答えた。妹からのメールであんな顔になるものだろうか。香枝は疑心暗鬼になりつつも、宇田川をマンションの狭い部屋にまねき入れた。宇田川の読み通り、香枝の部屋はいつも整理整頓されている。生理的に「汚れ」がダメなので、酔っ払って帰っても キッチンを磨いたりしてしまう因果な性格だ。
 シャワーを先に譲り、香枝はその後で浴びた。たっぷりしたTシャツを身につけて部屋に戻るが早いか抱きすくめられた。ベッドに移行するスピードといったら、水を飲む隙さえないくらいだ。香枝の髪は濡れたままだ。着たばかりのTシャツを剥ぐように脱がされた。
「ね・・ちょっ・・」
 押し倒されて上からキスを浴びせられ、香枝の抗議は封じられた。
「わりー。久しぶりなんで俺も」
 唇を0.5秒離し、早口で言うとまたキスをする。香枝は宇田川の両肩を押して「嘘だ」と言った。
「なんで嘘よ」
「慣れてるし」
「慣れてるよ」
 宇田川は眉をあげて平然と答えた。
「でもねー俺の残業時間って100時間超えよ? 土日もロクにないし。好きでやってんだから自分は全然いいけど、女は相手にしたくねっしょこんな男。もう続かねーのなんのって」
 それは香枝も同じだ。前の彼氏のときも何度デートをドタキャンしたか数え切れない。結局はそれが遠因となって別れたようなものだ。
「似てるね・・・」
 感慨深く香枝が言うと、宇田川は濡れた香枝の髪に指を差し入れ、こめかみに唇を押し当てて囁いた。
「俺ら、続く気がする」
「え?」
「そう思わね?」
「・・・うん」
 うんと答えはしたものの実感が遠い。嬉しくないと言えばウソになるが、2倍速で再生中のDVDみたいに進行がめまぐるしすぎる。「続く」と言われても、肝心の宇田川の感情がよく見えてこないのだ。
「体も合いそう。さっきのじゃ短すぎたけど」
 宇田川はニヤニヤ笑った。また唇を合わせ、香枝の口内に舌を差し入れて攻め入ってくる。香枝の乳首をつまんで擦り、引っ張った。強すぎる刺激に体がビリッと痙攣した。
「あっ!」
「痛くないっしょ?」
 クスッと笑う。慰撫するように香枝の背中を抱きながら、唇から耳、首筋から鎖骨、乳房に宇田川の唇が降りる。
「お前のおっぱい綺麗。相当いい」
 尖らせた舌先で乳首を弾きながら言った。小刻みな刺激は、愛撫というより遊ばれているようで何だかいたたまれない。いきなり噛まれる。
「ひゃっ・・・もう、なに・・」
 もう一方の乳首にも同じことをされた後、乳房は優しく揉まれた。乳首を包み込む舌の動きの巧みさに、香枝は吐息を洩らす。
「そか、優しく触ったほうが好みか」
「・・・・」
「そのうち強めも好きになると思うけどね」
 胸を愛撫されながらのからかいに、香枝はどうしても赤くなってしまう。こういうのにも慣れるときがくるのだろうか。
 宇田川は香枝の体のラインを確かめるように、片手を下に向かって這わせていった。ウエストからお腹、腰、お尻に回って太ももまでを確固たる手つきで触ると、上にあがって脚の間に指をすべりこませた。クリトリスを指の腹で転がしながら、唇で胸への愛撫を続ける。指が香枝の膣を押し開き、敏感な表面をくまなく刺激していく。
「あぁ・・」
 熱い体液がとろりと溢れ出す。香枝が身をよじり始めると、宇田川は顔を下方へと移動し、おへそにキスをすると、股間まで降りてきた。香枝の繁みに息がかかる。
「あっ」
 香枝は上半身を起こした。
「ダメ、それ、ダメだから」
「ダメじゃない」
「やだってば、見ないで」
「見ない見ない」
 宇田川は軽くいなすと、自分の頭にフトンをかぶせて香枝の下半身を覆った。香枝の股間に頭を無理矢理割り込ませて、顔をうずめる。
「んきゃあっ!」
 素っ頓狂な叫びが飛び出した。思わず片手で唇を覆う。宇田川の舌が香枝のアソコを舐めまわしている。両腕で腿をガッチリ押さえこまれて逃げ場がない。気絶しそうなほど恥ずかしい。真っ暗闇ならともかく今は朝だ。カーテンを閉めてはいるが、遮光カーテンではないので部屋は薄明るい。
 宇田川の唾液と香枝の愛液が混じる音が高く響く。クリトリスからアナルまで舐められてしまい、香枝は完全に陥落した。気持ちよすぎて抵抗できない。激しい羞恥のぶんだけ快楽のボルテージがあがっていく。
「あっ・・ああっ・・直己・・いい・・・あ・・あ、んっ」
 膣とクリトリスを同時に両方攻められ、香枝は宇田川の頭を両手で抱えた。あっという間に絶頂に導かれていく。もうイッてしまう。
「あ・・はっ・・あたし、もう・・」
 唇が離れ、快楽が唐突に奪われた。宇田川の・・いや、直己の顔が香枝の顔の高さまで戻ってくる。興奮に湿った目をしている。わずかに頬が笑っているように見える。愛液で濡れた唇をペロリと舐めまわし、手の甲で拭った。香枝は首を横に振った。
「やめ・・やめないで。ひどい・・・」
「ん? なに?」
「途中でやめるなんて、ひどいよ・・どうして・・」
「へえ、最初は嫌だって言った癖に」
 興奮のなかに意地悪さを忍ばせて囁いた。香枝の目から涙がこぼれた。無我夢中で手を伸ばし、直己のペニスに触れた。香枝の股間は熱く脈打っている。中断された愛撫を死に物狂いで乞っている。
「バカ、もうありえない。意地悪。死んじゃえ」
 ペニスを握り、鬱憤をぶつけるような、ねだるような愛撫を加えた。
「すげーエロい。香枝の顔・・・」
 答えずに直己の肩を噛み、摩擦し続ける。直己は香枝の耳にキスをして囁く。
「香枝もして・・俺の」
「嫌」
「今のこの顔で舐めてほしい・・お願い」
 ゾクゾクするような囁きだ。5秒と抵抗できないこの眼。この声。
 香枝は顔を下げ、直己のペニスに視線を落とした。初めてまじまじと見つめる。大きさを増したそれを握り直すと、舌の先でたっぷり濡れた先端を舐めた。ボディーシャンプーの香りに直己自身の味が混ざる。膨れた先っぽを唇の輪のなかに入れ、好きに舐めまわす。香枝の体は、自分の手で慰めてしまいたいほど昂っている。
「もっと奥まで入れて」
 直己が言った。その通りにする。苦しい。喉にあたって咳き込みそうだ。口に入れながらどうやって息をするのか忘れてしまった。唇で圧力を加え上下に動かす。股間から流れた愛液が内股を伝って流れ落ちるのを、はっきりと意識する。本格的に泣きたくなってきた。必要以上にペニスを締め付け、リズミカルに激しく動く。唾液でびしょ濡れになったそれは、香枝の口の中で抗議するように何度もビクッと動いた。
「あっ!・・と・・ちょっ・・」
 香枝の髪を撫でていた直己の指先が固まった。綺麗な腹筋が急激に上下する。
「香枝・・もう、いい。ストップ」
 頭を強くつかまれ、ペニスから引き剥がされる。直己はふうと丸めた息をついた。
「んっか、やたらすげーなお前・・よいしょ」
 香枝の体を引き上げて横抱きにする。直己の手が香枝の脚の間に入った。溢れているのを確かめると、目が可笑しそうに見開かれる。
「あちゃー気の毒な・・」
「気の毒って何?」
 香枝は直己の頬をつねった。ギリギリと力がこもる。涙で視界が霞む。
「いてて、いてーよ」
「知らない。もう帰ってよ!」
体をねじって背を向ける。背後から両方の胸を掴まれた。
「・・やっ!」
 両胸を強く揉まれる。耳と首筋を、口唇と舌の激しい愛撫が這った。

天敵とあと一秒のキスを(5)
「あっ・・ 」
 指で掻きまわされる。クリトリスを弄られる。遠慮なく触っているのに、香枝の感じるスポットを注意深く探りあてようとしている。同じやり方だ。びっくりするほど大胆なのに細心な、宇田川の仕事のやり方と。
 香奈のアソコが宇田川の指で濡れた音をたてる。乳房は唇と舌で丁寧に愛撫されている。気持ちいい。香枝は気持ちが昂り過ぎ、続けざまに声をあげた。
「あ・・ああ・・」
「触って」
 宇田川は香枝の手にペニスを握らせた。26歳という年齢のわりに今一つ性的に成熟していない香枝は、こういう瞬間に黙りこんでしまう。宇田川のものはたぶん最大に膨張していると思われ、圧倒的な太さを持っている。香枝の胸に怯えが走った。これちゃんと入るのか・・・。
「触りかた知ってんの? 教えたほうがいい?」
「バカ・・もう」
 いちいちからかってくる宇田川が憎らしく、仕返しのようなつもりでペニスを摩擦した。
強く擦ると跳ね返してくるようだ。波打つ脈が伝わってくる。宇田川の心臓を握ってるみたいだ、と思う。先端は濡れている。首のくびれたところを指先で摩ると、「ふ・・」と宇田川が短い息を洩らした。
「やべぇ、わりと上手いね・・」
「だからそういうこと、いちいち口に」
「入れたい。限界」
 短く呟くと、右手で香枝の左膝の裏を持ち上げて脚を開かせ、ペニスの先端を膣に押し当てた。
「あ、ゴムつける? たぶん持ってるかも・・・ビンゴの景品で貰ったやつ」
「・・いい」
「ほんと?」
 香枝はうなずいた。生理はあさってだから、安全日のはずだ。
「ま、もちろん外で出すし・・じゃいくよ」
 宇田川は香枝に押し入ろうとした。下腹が熱くなる。香枝は生まれて初めてセックスをする少女のように眼を閉じたが、膣の表面に強い、ぬるっとした圧がかかるばかりで、なかなか入ってこない。
「入んねーんだけど・・」
 宇田川は焦りながらも可笑しそうに喉で笑った。香枝の目をじっと見つめる。
「処女?」
「ちが・・・」
「じゃ超久しぶりってことか。固すぎ、入口が」
「うるさいなー、もう黙ってよ」
 真っ赤になった香枝は手で宇田川の唇を塞いだが、ベロリと手のひらを舐められて笑いだしてしまった。互いに笑ったまま唇を合わせた。
「力抜いて。ちょっとゴーインに行く」
 宇田川が早口で言った次の瞬間、鋭い痛みが体の中心を刺した。
「はっ・・ああっ!」
「う・・」
 宇田川が低く呻いた。突き進むのに苦労している。脳天まで貫くような痛みが香枝を混乱に陥れた。
「宇田川・・・あ、あぅっ・・ダメ・・!」
 本能的な拒絶をこめて宇田川の肩を押す。最後にセックスしたのはいつだったかも思いだせない。久しぶりの挿入は衝撃的に過ぎた。
「キツいのはこっちも同じ。我慢しな。そのうちマシに・・なんのかなコレ」
 宇田川は苦しげに息をつきながら、香枝の目尻に流れた涙を舌で舐め取った。ゆっくりと慎重に動き始める。湿った摩擦音がいやらしく響く。香枝はどうしようもないほど濡れている自分を意識する。痛いことは痛いが、快感の疼きが次々と開き始めてもいる。宇田川の重さが息苦しく心地いい。
「よしよし、その調子・・」
 耳元で囁かれる。からかいのなかに優しさがある。女を包み込むような声をしている。
「あ、は・・ぁ・・」
 甘い思いが心臓から噴き出て、香枝に声をあげさせる。
(この人のしかた・・めちゃくちゃ好き・・)
 宇田川の腕が香枝の脚を更に開き、本格的に動き始めた。衝撃度が格段に上がり、香枝は強張った背中をのけぞらせた。柔らかい肉のなかに固いものが絶え間なく打ちこまれる。身体のなかに押し入る熱さが切ないほど愛おしい。やがて痛みはほとんど消え、香枝は宇田川の腰に脚を絡ませて締め付けた。
「あっ・・ん・・あ、ああ、宇田川・・」
「じゃなくて、直己」
 宇田川はディープキスをした。香枝は無我夢中で頭を浮かせ、唾液を呑み込むようにキスを返した。
「んん・・」
「直己。言って」
 ディープキスの合間に楽しそうに言葉を繰り出す。息は苦しそうなのに笑っている。
「直己・・」
「香枝」
 下の名前を甘く呼ばれ、香枝はうっとりしてしまった。宇田川は何もかもが上手だ。怖くなるくらい女慣れしていることが少し哀しくもある。
「香枝・・・香枝・・」
 そんな声を出さないで。あたし、おかしくなってしまうから。
 香枝は無言の抗議をこめて宇田川の背中を軽くつねった。宇田川は激しく動きながら、香枝の唇をキュッと噛んでそれに応えた。
 体をゆすぶられる。絶頂を運ぶ波がすぐそこにやってきている。忘れかけていた感覚が蘇るまでの時間はこれほど短いものか。
「は、あっ、いい・・・いい・・ああ・んっ!」
 香枝の腰が自然に動き出す。まだイキたくない。宇田川とずっと抱きあっていたいと願っているのに、体は性急に快楽を絞りだそうとしている。
「ひゃっ・・あ・・助けて・・イヤ、まだ、イヤ・・」
 香枝は首を横に振る。涙が飛び散る。宇田川にしがみつき、凄まじいほど膨れ上がった津波を押さえこもうとした。
「イッて・・香枝。いいから・・・大丈夫だから」
「直己・・あっ・・もう・あぁっ あっんんっ!!」
 自分の喉から出たとは信じられないような恥ずかしい声をあげ、香枝は真っ白な絶頂に達した。宇田川のバカ、となぜか心で罵った。絶頂の糸はブツ切れになることもなく細く続き、涙がどんどん出てきた。
 ぐったりした香枝の腰を掴んで宇田川は更に突き上げ、「あ・・」という短い呻きとともにペニスを引き抜いた。精液が香枝の臍のくぼみあたりに溜まったことも、宇田川が誰かのデスクの上のティッシュを取りにいき、それを拭いてくれたことも、泣いている香枝にはわからなかった。

 香枝は地下鉄の始発に乗った。宇田川も一緒だ。二人とも寝不足のため、シートに並んで腰かけボーッとしている。足元には会社の紙袋に入った三冊のファイルがある。
「俺んち超散らかってんの。落ち着かないからお前んちで寝かせて」
 宇田川はあくびをしながら、当然の権利を行使するかのような言い方をした。
「来てもいいけど、あたしんちだって散らかってるよ」
「嘘つけ。香枝のデスクって忙しくてもキレーだもん。そーゆーとこ女っぽいよな」
「・・・・」
「褒めると必ず黙るのな」
 宇田川は小声で笑った。赤くなった香枝は宇田川の横顔を睨んだ。
「あんたってSだよね」
「そ。苛め過ぎて嫌われるタイプ。お前みたいな勝気なのには必ず嫌われる。でも好きなのもお前みたいなタイプでさー、嫌われれば嫌われるほど苛めたくなる無限ループでどーしようもねーの」
「それって小学生と同じじゃん」
「同じですよね」
 宇田川は素直に頷いてから、「あ」と香枝を振り向いた。
「籾山、資料どのくらい頭に入った?」
 いきなり「籾山」に戻って仕事の話をされたので香枝は面喰い、「まだ半分」と答えた。
「月曜日までには何とかするけど」
「月曜日までって言われたら金曜日までにやんの。それが仕事なの」
「偉そうに。あたし寝てないんだからね。今日はもう仕事はやらないから」
「何言ってんの。えーと今日はまずシャワー浴びて、フルコースのセックスして、眠って、メシ食って、それから仕事な」
 宇田川は「フルコースのセックス」のところだけ香枝の耳の穴に吹き込んだ。香枝は絶頂よりも高い羞恥の波にさらわれて顔をそむけた。電車が最寄りの駅のホームにすべりこんだので立ち上がった。「あんたなんか来るな」と言ってやったが宇田川は笑って立ち上がり、香枝のウエストに手を回して歩きだした。

天敵とあと一秒のキスを(4)
「コーヒーちょーだい。さっき新しいの作ったから」
 声が飛んできた。ベチベチベチと指は止まらずに動いている。
「・・自分でやれば?」
「お前のほうが近いじゃん。頼む」
 香枝は紙コップにコーヒーを注いで運んだ。宇田川はおざなりな礼を言った後、無言だった。空恐ろしい集中力でタイプし続けている。香枝はソファーに座って再びファイルを読み始めたものの、内容なんかひとつも頭に入ってこない。
「おーし終わり。早っ! なんて素晴らしい俺」
 宇田川はパソコンを閉じ、コーヒーを飲むと腕時計を見た。
「ビミョーな時間だな。タクシーか始発を待つか。籾山はどーすんの?」
「資料読んだら帰る」
「それ読んでるって言わねっしょ。ページ進んでないじゃん」
 宇田川はパソコンを椅子に置くと立ち上がり、テーブルを迂回して香枝の前に立った。身をかがめて、香枝を囲うようにソファーの背に両手をつくと顔を覗き込む。笑っている。香枝の心臓がドゴンと鳴った。
「なに・・」
「化粧そーとー剥げてんなぁ。こないだのグチャグチャ顔よりましだけど」
 このかすかな悪意は、あの夜ホテル行きを断ったせいに違いないと香枝は思った。
「どいてよ、邪魔」
「質問していい?」
「え?」
「この場で今キスしたがってるの、俺1人ですか?」
「・・・」
「俺は籾山にキスしたい。でもお前が嫌なら何もしないで帰る」
 顔を5センチの距離まで近付けると、宇田川は意地悪な笑いかたをした。優しく髪を撫でてくれたあの手の持ち主とは思えない。唇の距離はもう触れんばかりだ。宇田川の香りがする。一度抱きしめられただけなのに、香枝はもう彼の匂いを知っている。
「キスしたい?」
 宇田川は奇妙に優しい小声で聞いた。
「・・したい」
 香枝は眼を伏せて答えた。かなり屈辱的だった。だが嘘じゃない。香枝はこの3日間、ともすれば宇田川のほうへと飛んでいく意識を抑制するのが精一杯だった。たぶん宇田川には彼女がいると思う。こういうオーラを持つ男に女がいないわけがない。そうわかっていても触れたかった。
 宇田川は乾いた唇で香枝の上唇をはさんだ。すぐに離し、唇の端っこを舐める。そして反対側の唇の端も。宇田川の頬はいたずらっぽく歪んでいる。香枝は焦れて自分から唇をあわせたが、すっと顔を引かれ「積極的ですねー」とからかわれた。なんだか傷つき、傷ついた自分がバカみたいで鼻の奥が熱くなった。
「このくらいで泣くかねえ」
 宇田川は額を香枝の額にくっつけて囁いた。
「泣いてない」
「ちゃんとキスしてやるから泣かない泣かない」
 なぜいつのまにこっちが乞ってることになっているんだろう。香枝は地団駄を踏みたいくらい悔しい。
「でもこの中腰が辛くて。いてて・・・」
 と言いつつ宇田川は香枝の横に座り、唇をあわせた。待ったなしのディープキスだ。2本の腕で強く抱き締められる。体が密着すると1秒とかからずに香枝は発情した。体の奥が熱い。舌と舌が睦みあう。相思相愛のカップルってわけじゃないのに、舌同士だけはそうみたいだ・・・と考えながら宇田川の背中に腕をまわした。
(・・・どうしよう、たぶん好きだ。こいつのこと)
 冷たくて熱い塊が喉を降り、お腹まで落ちていった。オセロの盤面がラストで逆転して色が裏返るように、香枝の心も反転していた。あまりに急激な変化に自分自身がついていけなかった。
 ジャケットを脱がされ、首の後ろを掴まれた。のけぞらせた香枝の喉を、宇田川の唇が這った。
「あ・・」
「やべーんだけどその声・・」
 宇田川が小声で笑った。香枝の耳たぶを軽く噛み、中に熱い息を吹き入れる。
「あっ・・ん・・」
 耳は無条件に弱い。自分で触っても何も感じない場所なのに、人に愛撫されるとゾクゾクしてしまう。
 宇田川は香枝を柔らかく押し倒した。のしかかりながら耳へのキスを続け、指先で香枝の乳首のあたりを撫でまわす。布越しでも過敏なほど感じてしまい、香枝は身をよじらせた。
「あ、宇田川・・・ダメ」
 ここ会社じゃん、という冷静な声が頭のなかにこだまする。だが胸を揉まれて声を抑制することすらできなくなっている。このままここでセックスしまうのだろうか。彼氏でもない宇田川と。だいたいここは明るすぎる。蛍光灯が煌煌と照らすオフィスでなんて絶対に無理だ。
 宇田川の手が香枝のインナーを胸の上までまくりあげ、ブラを露出させた。ホックをはずして浮かせたカップの下に手を潜り込ませると、じかに肌に触れた。固くなった乳首を唇で吸われる。恥ずかしさで香枝の顔がますます熱くなる。宇田川にこんなことをさせている自分も、楽しそうに乳首を舐めまわす宇田川も変だ。でももう止まらない。
「あっ・・あ・・ダメ・・やだ、こんなとこで・・」
 場所だけが嫌でセックス自体はOKと言っているようなものだ。香枝は羞恥に襲われて両手で顔を覆った。
「おっまえマジそれ? こーゆーキャラだったか?」
 両手首を掴まれ、真っ赤になった顔をあらわにされた。宇田川は困ったような、ものすごく嬉しいような、Sっぽい意地悪さもまぜこぜになった表情をしていた。
「だって、明るすぎるんだって」
「じゃあ電気は消す。でもここで抱く。いいよな?」
 質問の形をとっているが口調は断定的だった。素早く香枝の上から降りると、入口のスイッチのところまで歩いて蛍光灯をパチパチと消し、フロアの一番向こう側の列だけをつけっぱなしにした。うす暗くはなったが、丸見えであることには変わりない。香枝は乱れた服を引っ張って直しつつ、宇田川を待った。入口近くに放置してあったローラー付きのパーテーションを片手で引っ張ってやってくる。もう一方の手で白いシャツのボタンを外している。パーテーションをソファーの横に設置し、外から見えないようにすると、宇田川はシャツを脱ぎ、その下のTシャツも脱ぎ捨てて放った。外した腕時計をテーブルに置いたコトッという金属音が、情事開始の合図のように聞こえた。
 宇田川は再び香枝にのしかかって愛撫を再開した。なんだこの邪魔な布は、というような仕草で香枝の上半身を裸にしてしまうと、しっかりと抱きしめてくれた。宇田川の肌は香枝よりも熱い。肩の骨の張った筋肉質な体のラインは見惚れるほど美しい。香枝はゴツゴツした肩甲骨や張り詰めた背中を撫で、鎖骨に唇をつけた。しなやかな首筋にも。
「くすぐってっつの・・」
 宇田川の喉が可笑しそうに動いた。だって綺麗なんだもんと香枝は心のなかで言った。
 宇田川は香枝のグレーのパンツとストッキングを少し苦労しながら脱がせると、足首から抜いた。香枝に残されたのは、もうショーツ1枚だけだ。
「次回はスカートにしてもらいてーな」
「え?」
「だから次回。こん次」
 香枝の脚を下から撫であげながら、宇田川は顔まで戻ってきた。眼だけは満足そうに香枝の脚を鑑賞し、ショーツを指先で弾いたりしている。意味がよく取れない。この関係を継続的にするという事か。つまりセックスフレンドになれってことだろうか。そんなの嫌だ・・・。
 香枝の乱れた思考は、股間に潜り込んできた宇田川の手の動きで中断された。いきなり布の中に手を入れられ、「あ、やだ!」と声をあげて痙攣する。
「嫌なんだ?」
 宇田川は笑って唇にキスしながら、香枝の奥深い部分を触り続けた。
「熱い。超濡れてる」
「言わなくていい・・んっ・・」
「真っ赤になるから、面白れんだもん」
 宇田川はパンツを脱ぎ、下着も脱いでしまうと全裸になった。「同僚」の性器を直視する勇気は香枝にはまだない。宇田川に脱がされるのはさすがに恥ずかしいので、ショーツは自分で脱いだ。会社で全裸なんてありえない異常さだ。
「スゲーな俺ら。まさか監視用カメラとかないよな?」
「あったら自殺するよ」
 宇田川はクスクス笑い、「でもお前の裸なら恥にはなんねーかも」と褒め言葉らしきセリフを言った。香枝の脚の間に体を割り込ませ、くすぐるように膣の表面を愛撫していた指を中に沈みこませた。かすかな痛みが走った。

天敵とあと一秒のキスを(3)
「あ・・だ、めだって・・もう」
「・・どっか」
 宇田川は苦しそうに囁いた。目は欲情していると同時に、強い迷いの色を見せている。
「行くか? 俺と」
 ホテルのことを言っている。香枝の眼が一気に覚めた。家出をしていた理性が「ただいま!」と戻ってくる。
「行か、行かないよ・・そんな・・」
「だってお前自力で立ってねーよ。腕疲れたし、どーせなら横になりてーかも・・」
 クスッと笑ったが、いつものような余裕のある笑い方ではなかった。
「あたし、帰る」
 香枝は宇田川の胸を押した。ホテルなんてとんでもない。後で絶対に後悔する。
「じゃ俺も一緒に帰る」
「一人で帰りたい」
 宇田川の表情がはっきりと変わった。苛立ち、傷ついてもいるような眼の色だ。香枝は宇田川から逃れると、金網に手をついてバランスをとった。脚がガクガクする。
「そんなんで、ちゃんと帰れんの?」
 宇田川の口調の冷たさが心に刺さった。
「あんたに関係ない」
「興奮してたくせに」
「あたしから誘ったわけじゃねーし」
 故意に乱暴に言い返すと新しい涙が湧いた。足元に落ちたままのバッグを拾い上げて歩きだす。宇田川は追ってこなかった。近くの交差点まで歩き、空車のタクシーに手をあげて乗り込んだ。タクシーが走り出すと、香枝は手のひらで唇を押さえ、もう片方の手で反対側の腕を抱き、きつく眼を閉じた。

 翌日は外出先に直行直帰だったので、宇田川と顔をあわせずに済んだ。その次の朝、天下分け目の合戦開始のような気合で出社すると、今度は宇田川が外出だ。ホワイトボードには「NR」、ノーリターンと書かれている。冷たい手の指に血がやっと流れたような感覚を覚えた。できればこのまま一生会わずに済ませたいと香枝は祈ったが、その翌日の金曜日はマーケティング部の定例ミーティングがあった。20余名のメンバーがコの字型に並べられた会議室のデスクに居並び、丁々発止の意見交換をする日だ。
 宇田川は開始時間から3分遅れて会議室に入室し、「電話入ったんでスンマセン」と気軽に皆に謝った。白いシャツに黒い細身のパンツはシンプルだが、安物ではありえないカッティングのものだ。香枝は一目でそれを見てとると、会議用ノートに眼を落しているふりをした。
「さて今日の議題は・・ああそうそう、その前に」
 ディレクターが立ち上がり、「宇田川、立って」と言った。
「耳の早い皆のことだから知ってる人もいると思うが、本日付で宇田川がイベントマネージャーに昇格した。入社以来八面六臂の活躍だったから、この人事に反論するヤツはいないと思う」
 香枝は右手に持ったボールペンを取り落とさないようにするのが精一杯だった。
「スゲッ。歴代最年少じゃね?」
「異例だよなー。まー無理もねーか、実際あいつがマーケ引っ張ってるし」
 隣席の囁きが聞こえる。香枝は微笑みを頬にくっつけることに成功した。だが心の一部が急激に壊死していく。いつかはと憧れていた役職を、宇田川はいとも簡単にかっさらった。27歳の若さで。
「えー、神田さんは活躍って言ってくれましたけど」
 挨拶を促された宇田川は全体をぐるりと見回し、香枝を含め均等に視線をあてた。
「まあ実際いいチームに恵まれて、いい仕事できてきたかなーと思ってます。でもまだまだできてないことあるし、やりたいことも一杯あるんで、皆と一緒にますます盛り上がってギャーギャーやってきたいと企んでます。これマーケの特権だよな? どの部署よりマジサイコー!」
 宇田川は本当に楽しそうに笑った。いくら若く自由な社風とはいえ、会議でこの演説はありえない。だが全員が爆笑し、歓声とともに宇田川に心からの拍手を送った。
(かなわない・・本当にかなわない・・・)
 こわばっていた香枝の肩が落ちた。
 会議の後で宇田川に近づき、「おめでとう」と言った。礼儀以上の微笑みを浮かべることに苦労はしたが、祝福の気持ちがないわけではないのだ。宇田川は「サンキュっす」と答えた。三日前の出来事なんか忘れたような顔だ。
「あ、そーだ。話ある。会議室に残って」
「話? なんの?」
 ギクッとした香枝だが、彼の平静な眼を見て仕事の話だとすぐに理解した。
 他のメンバーが全員去り、宇田川とシニアマネージャーの倉田と広い会議室に座ると、倉田は話を切り出した。
「こないだの社内コンペの宇田川の企画な、プロジェクトリーダーを籾山、お前に任せたいと思ってる」
「え? だってあれは私の企画では」
「誰の企画とかはもうどうでもいい。宇田川は今日からイベント全体をみる立場だ。だからリーダーは別の人間がやるべきだろ。お前ならできる。だからヨロシクうー」
 最後だけおちゃらけると、「あとは二人で話してね」と出ていった。香枝は無表情のまま座っていた。
「ムカつくか? 俺の手足になるのは」
 宇田川はごく冷静な顔で香枝の思考を看破した。
「でもそーゆー風に思ったらお前の負けなんだって。それをわかれ」
 テーブルに置いてあった3冊のリングファイルを香枝のほうに押して寄こした。
「今回の資料。全部読んどけよ。月曜の5時からミーティングすっからさ」
「あたしはこの話断れないわけ?」
「まーね」
 軽く答えて宇田川は立ち上がり、去りがけに香枝の肩を叩いた。「あっ」と過剰反応した香枝に「なんだそれ」と冷やかしの笑みを投げ、折り畳んだ1万円札を差し出した。香枝が受け取ると、会議室を出ていった。

 香枝は徹夜を覚悟した。週末の約束もキャンセルしなければならないだろう。この厚さのファイルを3冊、即座に把握できる頭は持っていない。
 マーケは残業の多い部署だが、金曜の夜なので9時半を過ぎるとオフィスにいるのは香枝だけになった。フロアの空調が壊れているらしく、温度設定をいくら下げても暑い。細身のわりに暑がりの香枝はジャケットを脱いだ。インナーはノースリーブだが、かえって気持ちがいい。
 給湯コーナーのコーヒーメーカーから煮詰まった液体をマグカップに注ぎ、誰もいないのをいいことに、ディレクタールームの隣の、応接スペースの黒皮のソファーに寝転がってファイルを読み続けた。スカートじゃなくパンツなので行儀が悪くてもかまわない。
 だが1時を過ぎると瞼が落ちてきた。あの出来事以来、寝不足が続いていたのだ。「ちょっとだけ」と自分に言い訳しながら、ファイルを枕にして目を閉じた。

 ベチベチベチベチベチ・・・聞きなれた音がする。何の音だっけ。そうだキーボードを打つ音だ・・・香枝は夢から覚めて眼を開けた。椅子に腰掛けノートパソコンを膝に乗せた男の脚が視界に映った。黒いパンツ。格好のいい長い膝下だ。
「あ!」
 香枝は半身を起した。何かが体から滑り落ちる。男物のジャケットだ。
「どーゆーカッコで寝てんの? 眼を疑ったぜ。しかも俺のファイル枕にしちゃって」
 向かいの肘掛椅子に腰かけた宇田川は香枝に視線を移さず、パソコンの画面を見て言った。
「・・なんでここに」
「近くで飲んでたんだけどさー、パッとヒラメいちゃって。ヒラメいたらすぐ書かねーと忘れちゃうんだよな。ノーパソ会社に忘れてきてマジ焦ったー」
「・・・・」
 香枝はしばらく固まっていたが、デスクに戻ってジャケットを羽織った。宇田川の神経を疑う。自分のデスクに座ればいいのに、なぜわざわざ香枝が寝ているソファーの真ん前で仕事をする必要があるのか。
 壁時計を見ると午前3時前だ。「動揺」なんてものじゃない。心臓がフロアに反響しそうなほど大きく鳴っている。宇田川の余裕のかましぶりが心から憎い。


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