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KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
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KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


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  初めてのお方はどうぞ。このブログ内の小説ラインナップが一目でわかります。


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  皆様へのお知らせとかお礼とか言い訳とか、いろいろ書いてあります。


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  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



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ラヴァーボーイの受難 (3)
「身を引くって表現、実生活ではじめて目にした」
 香枝は平坦な声で言った。横から覗いて読んだ直己は「すげー僻んでんな」と呟き、地下二階のボタンを押した。ビルの地下は駐車場で人気がほとんどないので密談がしやすいのだ。
「僻んでる?」
「裏を返せば、お前が『我が物顔』で仕事してて『目立ってる』から面白くねーってことだろ。要するに嫉妬だよ」
「嫉妬・・・」
 香枝は反芻し、シルバーのネックレスを指で弄んだ。
「ねえ、『陰で支える』ことに価値を置くのは職種の影響か、それともこの人の生き方がそうだってことなのかなあ」
「生き方と職種はリンクする。たぶんバックオフィスのサポート職で、本人の自己評価より職位もしくは年俸が低いヤツ」
「あは、すごいプロファイリングだね。大胆すぎるような、的を射てるような」
 地下二階でエレベーターを降りて歩き、薄暗い駐車場の一番端まで来ると、香枝は殺風景な白壁に背をもたれ、直己を見た。
「なんかこういう嫉妬って怖い。自分にもある感情で、理解できなくもないから尚更」
 恋愛における嫉妬深さという点では直己も人後に落ちないが、この手のメールを送りつける陰湿な心理は全く理解できない。
「まー気にすんな。このアドレス拒否ってみて、まだしつこくしてくるよーなら対策考えりゃいいし」
「あーあ、やっぱり直己が悪いんだ」
「はい?」
「もっとモテないように努力してよ。そのシャツもなんかチャラいし」
「アホか。職場で色目使いまくってるわけじゃなし、俺にも俺のシャツにも責任はございません。ところでお前、今日も畑中んちに泊まんの?」
「え?」
「今日は畑中んとこで寝るんすか? それともうちで?」
「・・・直己んち」
「聞こえねー」
「直己のマンションに行きます。よろしいでしょーか?」
「いいけど」
 ついニヤつきながら顔を近づけると、香枝は苦笑を滲ませた眼を逸らした。彼女の肩に置いた手を二の腕にすべらせながら、こめかみに唇を寄せ、「来るだけじゃなくて、一緒に暮らせば」と性懲りもなく囁いてみる。
「ちょっと・・近いって。人が来るよ?」
「一緒に暮らすって言ったら離れる」
「もう、だから」
「言われて嬉しい癖に・・・嬉しくても断ってみせる節度ある自分が好き?」
「もう行く。ミーティング用の買い物しないと」
 香枝は直己の胸を押してどかせると、赤くなった顔を背けて歩き出した。

 自分のデスクに戻ったとたん、待ち構えていたようにトラブルの火の矢が飛び込み、直己の頬に残っていたニヤつきの影は一掃された。
 まず、今週末のイベントに招待しているJリーグの契約選手が、型落ちのシューズを故意に履いて試合に出場したという、契約違反の報告を受けた。まだ二十歳のその選手はブランド・アイコンとしての自覚が薄く、「俺は新しいのよりこっちが好きなんです」と主張して譲らないという。イベント中に宣伝価値のない旧型シューズを履かれては、メーカー側はたまったものではない。早急に会ってシューズを回収しなくてはならないが、説得が担当者の手に余るため、明晩のアポに直己も同行することになった。
 イベントのバイト指導員が急病で倒れたとか、業者の納期が遅れるとか、芳しくない報告ばかりが次々と舞い込み、顔面蒼白の部下を激励しつつディレクターからのプレッシャーに抗弁し、「俺って中間管理職よね」とボヤきながらミーティングに行って戻ってくると、デスクの上にすき焼き弁当が乗っていた。老舗の高級品だが、誰が置いたのやらメモも何もついてない。
「この弁当俺んとこに置いたの誰?」
 立ちあがって大声で聞いたが、「えー知りません」「どっかのランチョンの余りじゃね?」と周囲の反応は薄い。気味が悪いので放置し、マーケの男二人とつけ麺屋で遅い昼食をとった。話題はもちろん『あの籾山をどうやって落としたのか』等に持っていかれるのだが、「職場ではただの同僚なんで、今まで通りってことでよろしく」と鉄面皮の笑顔で踏み込ませなかった。食べ終わるや二人と別れて、運河沿いのボードウォークで徹夜明けの脳を休めていると、会社携帯に例の女からメールが入った。
『すき焼きはお嫌いでしたか?』
 携帯を運河に投げ込みたい衝動にかられたが、パンツのポケットにねじ込んで会社に戻り、午後の予算会議に出席するためにCFOの個室に向かった。個室の外で会議用のミネラルウォーターを準備しているアシスタントに「こんちっす」と声をかける。
「あーウタさん、おつかれ」
「萩尾さん、明日の食事会ってアシスタント全員来んの?」
「えーと、二、三人来られない人もいるわよ。スクープの内情聞けなくてガッカリしてるんじゃないかな」
「ロジスティックスの神田さんとかは? スクープに興味なさそーな真面目な人だけど」
「来るわよ。だって興味ない人なんかいないでしょ」
 萩尾は流線型の眉をあげて、おどけた表情をつくってみせた。入社間もない頃、直己は酔ったこの女に口説かれたことがあるが、今は互いに忘れたフリをしている仲だ。
「ま、お手柔らかにお願い」
 直己は苦笑いを浮かべ、CFOの個室に入った。

 その日の午後も引き続きトラブル対応に追われ、ろくに腰を下ろす暇もなかった。夜は夜でパーティーの進行役を務め、二次会まできっちり参加した直己がタクシーで帰宅したのは、午前三時だった。香枝はまだ起きていて、二人用の小さなダイニングテーブルに陣取り、会社のノートパソコンを開いて仕事をしていた。
「お帰り」
 表情のない横目でこっちをチラッと見やる。かなり機嫌が悪そうだ。愛犬のビアンカのようなお出迎え笑顔(犬だって嬉しければ笑う)を期待していたわけではないが、疲労度の高い一日を過ごした不快指数がアップした。
「例の女は?」
「あれからメールはこなかった。アドレス拒否ったし」
 「そ」と言ってネクタイを外し、バスルームに向かおうとする直己の背中に「USB盗まれた」と、香枝はぶっきらぼうな言葉を投げた。
「え?」
「今日の午後、PCにさしっぱなしにして席外したスキに、あたしのUSBがなくなったの。契約用プレゼンの最新版を入れてたヤツ」
「倉田さんに報告したか?」
「真っ先にしたよ。でもあたしが失くしたって思ってる。『毎日楽しくて注意がおろそかになってんじゃないの』ってからかわれたよ」
 香枝の声が低く感情を表さないのは、静かに怒り狂っている証拠だ。
「席はずしてたのは何分」
「一時間半。ミーティングだったから」
「それ席外しじゃなくて立派な不在だろ。お前リスクマネジメントのセミナー受けたっしょ?」
「危機管理意識が甘かったのは認める。でもプレゼンにはパスワードかけてるし、そもそも今説教とか聞きたくないから黙って」
「黙っててほしいんなら報告すんな」
 刺々しい応酬に終止符を打つため、直己はバスルームに入り、シャワーのコックをひねった。前面の壁に両手をつき、頭を垂れて強い水勢を背中に受けながら息を吐く。
 USBを盗んだのはもちろんメール女の仕業に違いない。契約用のプレゼンは社外秘の機密書類ではあるが、情報漏洩に関しては心配する必要はないだろう。小学生が誰かの上履きを隠したりするのと同類で、浅はかな嫌がらせに過ぎない。
 裸の腰にバスタオルを巻きつけてバスルームを出ると、香枝はもうベッドに入っていた。眠っているのかタヌキ寝入りか、白いTシャツの背中はピクリとも動かない。
「おやすみなさいませ」
 独り言の口調がつい皮肉っぽくなる。直己はグラスに注いだミネラルウォーターを飲み干すと、彼女に背を向けてダブルベッドに滑り込み眼を閉じた。昨夜は一睡もしていないので速効で落ち、三時間後に目覚めたとき香枝はもう出勤したらしく部屋にいなかった。ダイニングテーブルの上に、ラップをかけた二個のお握りとメモが置かれている。何か事務的な連絡だろうかと、若干重たい気分でメモを取り上げた。

『お握りの中身なーんだ? 当てたら直己にキス一個。外れたら直己があたしにキス一個』

 予想外の甘さに破顔一笑した。メモの右隅に『イライラしててごめん。今日は笑顔で話そ?』と極小の字で書き添えてある。
 鮭かな、と推測してお握りを割ると、中身は直己の好きな牛肉の佃煮だった。口に放り込んで咀嚼しながら、今この瞬間の彼女の不在を呪った。抱きしめてキスをしたい。一個と言わず何個でも。
 もし自分の勘が正しければ、今晩の食事会でメール女の件は解決するだろう。そうすれば香枝の顔に晴れやかな笑顔が戻る。日曜日に網膜に焼き付けた、夏の陽射しのようなあの笑顔が。



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