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KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
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KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


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  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



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ラヴァーボーイの受難 (4)
 その夜、直己がヴェトナムレストランの店内に入ったとき、「あ、ウタさん来た!」と真っ先に明るい声をあげたのは、マーケのアシスタントの亜樹だった。
「ここ! あたしの隣に座ってくださーい」
「やだよ。お前セクハラすっから」
 長テーブルの一番端に腰を下ろし、七名のアシスタントの顔を見渡した。年齢も容貌も性格も十人十色の彼女たちが興味津々に繰り出す質問をかわしたり受け止めたりしながら、直己は世間話の方向に会話を誘導した。会社の近所では安い弁当屋がない、という社員共通の不満を口にしてから、なにげなく切り出した。
「そーいえば、昨日俺のデスクに、やったら高いすき焼き弁当が置いてあったんだよな。どっかでランチョンとかあった?」
「昨日はないですよ。だいたい高いお弁当が余ったら、人にあげないで自分らで食べますって」
「ふーん、じゃ俺の熱烈な崇拝者が買ってくれたってことか」
「エアー崇拝者が?」
 亜樹の突っ込みに全員が笑った。そのうちの一人の顔をひそかに観察していた直己は、トイレに立って戻るや否や、「はい席替え!」と全員に命じてシャッフルさせ、ロジスティックスのアシスタント、神田の隣に素早く腰を下ろした。月曜日に亜樹のデスクの傍らに無表情で立っていた、真っ黒なおかっぱヘアのアシスタントだ。
「神田さん、次何飲む? サイゴン?」
 ドリンクメニューを広げ、殊更に優しく話しかける。
「いえ、私はもうお酒は」
「じゃお茶とかジュースは?」
「結構です。飲みません」
 神田は大人しそうな外見とは裏腹に、ピシャリとドアを閉じるような物言いをする。業務以外の会話を交わしたことはほとんどないが、仕事ぶりは神経質なほど緻密であり、アシスタントとしては優秀な部類だろう。
「神田さんってAccessの魔術師って呼ばれてんだろ? ヘルプデスクより詳しいってうちの亜樹ちゃんが言ってた」
「いえ、そんなことないです」
 ぎこちない微笑みらしきものが頬に浮かんだ。このコは男から褒められたりすることはあるんかね、と考えながら白々しくない程度の世辞を与え、冗談を飛ばし、親密な雰囲気を醸造させる。その気になれば売れっ子ホストになれると自惚れが走る瞬間だ。
「あ、俺ね」
 直己は親しげな笑顔でカマをかけた。
「昨日の昼は麺の気分だったんで、弁当食わなくてごめんね」
「いえ」
 と反射的に答えた神田の唇が、遅れて痙攣した。
「そんな、私に謝ったって」
 慌てて言い足したが、直己の視線を受け止めきれず、ゆっくりと顔を伏せる。全ての女が君ほど正直なら世の中は平和でしょーね、と直己は拍子抜けしつつも、素早く囁いた。
「二人で話そう。五分後に店出て」
 返事を待たずに一万円札をテーブルに置き「ごっそさん。俺会社に戻るんで」と立ち上がった。
「逃げる気ですかあ?」
「まだ全然何も聞いてないのに!」
 抗議の嵐を笑顔でスルーしながら店外に出て腕時計を見た。あまり時間がない。例のJリーグ選手に会うため、今から横浜まで行かねばならない。

 おととい香枝に送られたメールを読んだ直後、直己はIT部のヘルプデスクのマネージャーに、会社のサーバーのログ調査をひそかに依頼した。送付時間からみて、メールは会社のPCから送られた可能性があると踏んだのだ。
 その日WEBメールに頻繁にアクセスした女子社員は十名以上いたが、そのうちの一人が神田だった。彼女のアクセス履歴が月曜日から唐突に始まっており、それ以前は存在しなかったことから、十中八九こいつだろうと当たりをつけたのだが、さっき全員の前で弁当の話を持ち出した際、神田の眼を一瞬だけ横切った狼狽によって、疑念は確信に変わった。
 五分と経たずに、神田はレストランから出てきた。判決を受ける被告人といった面持ちで、化粧気のない顔の血の気が失せている。
「籾山のUSBある?」
 直己は彼女の眼の前に立ち、気軽な声で話しかけた。
「え・・・」
「もし今持ってたら返して。返してくれたら不問にするし忘れる。籾山にも神田さんのことは話さない」
 神田はたっぷり三十秒以上凝固していたが、バッグから青いUSBを取り出し、直己に渡した。
「どーも」
「何も聞かないんですか」
 直己の顔を見ず、撥ねつけるような口調で聞く。
「聞くって?」
「どうしてこんなことしたの、とかです」
「悪いけどゆっくり話聞いてる暇ねーの。でもこれだけは言っとく。神田さんの気持ちに応えられない。ごめん」
「・・・最初から何も期待してません。どんなに好きでも、あたしじゃどうにもなんない事はわかってます。でも、ずるい」
 背の低い神田は直己の胸の真ん中を凝視し、強い語尾を切った。
「籾山さんってずるい。あの人全部持ってるのに。日の当たる場所の仕事も、運も、好かれる見た目も」
 唇をきつく噛み、再び解放して言葉を吐きだした。
「あたし・・あたしは彼女と同期入社です。でも彼女が講堂でマイク握ってるとき、あたしはお弁当とお茶配ってるんです。仕事ができないわけじゃない。でも積極的じゃないし、要領よく立ちまわれないし、引き立ててもらえないんです。幾ら頑張ったって雑用だけで終わるんです一生」
「一生ってこたあねっしょ」
「宇田川さんにはわかりません。絶対にわからないです」
 この流れはやばい。頼むから今泣いてくれるなと必死で念じたが、神田は両手で顔を覆った。
「お前なあ・・」
 ついお前呼ばわりをしながら、直己は周囲を見回した。繁華街のど真ん中で泣いている女と泣かせている男。全くいい見世物だ。
「部署はロジスティックスだろ? だったら物流システムの改善案を作成して上司に提出しろ」
 神田の嗚咽が止まった。度肝を抜かれた表情で直己の顔を見上げる。
「そーゆーのやったことある?」
「・・・いえ」
「ねーだろうな。アシスタントの仕事じゃねーからな。あのな、弁当配ることの何が不満なのかは知らねーけど、もしそれがマジで嫌なら他の仕事ができることを証明しろ。物流の問題点を炙り出して解決策を示せ。そういう仕事を死に物狂いでやるんだよ。諦めずにやりゃあ認められる可能性はある。ただし他人に認められることを期待しすぎるな」
 神田はハニワのように口を開けて絶句していた。
「あの・・・でも」
「何よ」
「そんなの、あたしが作ったって誰にも読んでもらえないです。頼まれもしないのに」
「頼まれ仕事だけやってっから僻み根性が発達すんだよ。仕事は自分でもぎ取るもんなの」
「だって、あたしにできるんでしょうか」
「できるかできねーかは自分で決めろ。本気で決めりゃ大概はその通りになる」
 なんでこんな女相手に熱弁を振るってんだ俺は、と呆れるが、この上もなく真摯な自分がいっそ笑える。
「わかった?」
「はい・・・」
「じゃもう行ってちょーだい」
「え」
「俺をここに置いて自分から去ってください。俺が去るより心情的にマシっしょ?」
 神田はバッグからハンカチを取り出し、俯いて涙と鼻水を拭いた。顔を上げた時、その表情は普段の硬さとは打って変わった、複雑怪奇な泣き笑いに変わっていた。
「・・・優しいですね」
「優しかねーよ」
 神田は首を横に振った。
「男の人は・・・大抵あたしを空気みたいに無視するんです。わざわざ声なんかかけません。でも宇田川さんだけは、笑顔で話しかけてくれるのが嬉しかった。今も優しくて、すごく優しくて・・・罪作りです」
 神田はひょこっと頭を下げると、直己に背を向けた。どこの店で買ったのやら、ぞろりと長いスカートで歩く後ろ姿が雑踏の向こうに消えると、「だから女はやなんだよ」と直己は吐き捨てた。
 美人でも不細工でも、女は一律に面倒くさい。三羽ガラスもアシスタント軍団も、とにかく面倒きわまりない。無性に腹が立つ。心臓に小さな杭を打たれたような罪悪感が、何の理由もなく胸を刺していることに。



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