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KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
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KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


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  初めてのお方はどうぞ。このブログ内の小説ラインナップが一目でわかります。


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  小説のキャラ紹介です。「100の質問!」コーナーもあります。お時間のある方はぜひ


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  皆様へのお知らせとかお礼とか言い訳とか、いろいろ書いてあります。


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  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



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プリンキピア・マテマティカ (3)


「クラケンは・・ネクタイ締めんの下手クソでさ、よくオニクラが直してやってた。公衆の面前で堂々とやりやがんの。それでも何の噂もたたねーくらい、クラケンってのはマジでトロいヤツだった。でも」
 宇田川はバッグを受け取ると歩き出したので、悠太も横に並んだ。
「クラケンはあの女が大っ好きで、金魚のフンみたいにくっついてた。なまじイトコで面倒見てもらえるんで自分は特別みたいな意識があったと思う。生徒会役員でもねーのに生徒会室に入り浸ったりしてさ。だから発狂したんじゃねーかって思うくらい泣き喚いたな。オニクラが」
 言葉を切り、宇田川は少し躊躇した。
「男とキスしてんのを見たとき」
 悠太は宇田川の横顔を見た。笑みを乗せて悠太を見返した眼には、皮肉めいた色が浮かんでいた。
「ここで問題。オニクラとキスしてた物好きな男は誰でしょう」
 答えを察した悠太に向かい、宇田川は「正解」と言った。自分の表情が変わったのかどうかわからない。だがたった今まで抱いていた高揚感が、山あいの霧のように消えていく。
「言っとくけど出来心な。生徒会室で二人っきりで仕事してたら険悪になってさ。あの顔をどーにか崩してやりたくて、殴る代わりにキスしちゃったわけ。犯してやろうかくらいの勢いで。したらクラケンがタイミングよく入ってきてもー修羅場っすよ」
 ふ、と短い笑いを洩らす。
「泣いたクラケンにメチャクチャ殴られたんでこっちも殴り返してさー。お前みたいなバカ、女に相手にされるわけねーだろ、眼覚ませアホとか口走ったりして。で、次の日クラケンはインフルで休んだ。死んだのはその次の夜」
「・・・」
「お前、罵倒した相手に死なれた経験ある?」
 悠太は首を横に振った。
「ねーよなそりゃ。なくて羨ましいよマジで・・・で、殴った理由ってのは、オニクラが笑ってたから」
「え?」
 ぼんやりと問い返す。二人がキスをしている場面が、悠太の脳内に広がっている。
「通夜でさ、オニクラは笑ってたんだよ、通路の隅で、ひとりで」
「笑ってた」
「笑ってたっていうか、笑いを噛み殺してる感じだった。イトコの通夜だぜ? 何があったって笑えねーだろ普通は。訳わかんなくてゾッとして、めちゃくちゃムカついてきた。こっちは最低の気分なのに何笑ってんだって」
「・・言ったの?」
「俺が黙ってると思う?」
 宇田川は唇を開いて笑おうとしたが、表情はすぐに閉じられた。
「けどオニクラは答えなかった。あなたに理解できないことを言うつもりはないわとか、あの顔で言うわけ。俺は何か黙っちゃってさ、睨んでたら『またキスでもしたいの?』ってバカにしたみてーに言われたんで軽く手が出た。噂じゃ思いっきり殴ったみてーな話になってるけど。つーか俺なんでこんな話お前にしてんだ?」
 悠太は黙っていた。どう返事していいのかわからない話だ。キス。葬儀で笑っていた倉嶋。その倉嶋に夢中だったクラケン。予期せぬ死に見舞われた、自分と顔の似た生徒。
「宇田川は」
 校門に入ると、悠太はぽつりと言った。
「倉嶋さんが好きなんだ」
「そーゆー解釈されると思ったけど」
 宇田川はつまらなそうに鼻で笑った。
「とにかく目ざわりなんすよ。見てるだけで超ムカつくの。海棠にはわかんなさそーだけどさこういうの・・あのなー、誰にも言うなよ今の話」
「言わないよ。言うような友達もまだここにはいないし」
「何すかそれ。おねだり? 俺に友達になってほしいってか?」
 宇田川はからかいをこめて片眉をあげた。悠太は、はは、と笑った。



 青葉台学園の教師の質は、以前の学校に比べて格段に良い。どの科目の教師も専門性に長け、熱意があり懇切丁寧だ。悠太は二日目にしてそれを実感していたが、今一つ授業に集中できなかった。ノートだけは機械的に取りながら、意識は左前方の倉嶋志保子へと吸い寄せられてしまう。
「じゃ佐々木、問二を前に出て解いて。それから転入生の、えーと海棠。問三をやってみて」
 教師に指され、悠太は少しドギマギしながら立ち上がった。幸いなことに数学は得意科目だ。可能な限り美しく数式を展開し切ったときにカタルシスをおぼえる自分は、数学オタクなのかもしれないと思う。予習したノートを見ずに黒板に数式を並べ答えを書くと、教師は頷いた。
「問三はそのまま板書してよし。問二のほうは、まー奮闘は認めるけど基本的かつ致命的な間違いがある。誰かわかる人?」
 悠太は席に戻りながらチラッと倉嶋を窺った。彼女はノートを取らず、検分するように悠太の答えを見つめていた。かすかな愉悦のようなものが眼の中に見てとれる。二万人中トップの秀才と自分を一緒にはできないが、数学に悦楽をおぼえるあたりは似たもの同士なのかもしれないと悠太は思った。


 わざわざ他のクラスから「ほら、クラケンに似てる」と見物に来る物好きが何人もいて、転入二日目も落ち着かない一日だった。悠太は感情の波立ちが激しいほうではないが、「クラケン」という単語を、卒業まで聞き続けなければならないのかと思うと、さすがに辟易する。
 放課後、教室の外に出ると「今週美術室の掃除当番だよ」と、見知らぬ男子に声をかけられた。クラスメートにこんな顔がいたかなと首を傾げながら美術室の場所を聞いた。
「新館の三階」
 男子はそれだけ言うと「じゃーね」と背を向けた。美術室に辿り着いてみたが誰も来ていない。おまけにどこを探しても掃除道具が見つからなかった。
「何を探してるの?」
 横手から声をかけられ振り向くと、倉嶋志保子が入口に立っていた。悠太は眩しさに眼を細めた。背後から午後の日差しを浴び、すらりとしたシルエットが切り絵のように浮き上がっている。
「あの、掃除道具を」
「この学園に掃除当番はないわ。掃除は専門業者がするから」
 倉嶋は軽い足取りで悠太に近づくと、手に持っていた折り畳んだ紙を広げて見せた。『大切な話があるので放課後美術室に来てください。海棠』と書かれていた。
「何ですか、これ」
「私の机に入っていたの。黒板で見たあなたの筆跡と違うから悪戯だとすぐわかったけど」
 倉嶋は紙を破ってゴミ箱に捨てた。
「悪趣味で暇な人たちは、健二に似たあなたに私がどんな態度を取るのか、見たくてしょうがないのよ。顔が似ているくらい、どうということもないのに」
「・・・」
「帰りましょう。かつがれたお詫びに車で送るわ。外に迎えが来ているから」
「え、いや、いいです。今日はその・・病院に寄るんで」
「病院?」
「J病院に。母が入院してて」
「じゃあ病院まで送ります。来て」
 倉嶋は先に歩き出した。断ることもできず、悠太は黙って後ろを歩いた。
 正面玄関に迎えにきていたのは、倉嶋の父親の秘書だという二十代後半くらいの男だった。秘書は車寄せに停めたSクラスのベンツの後部座席に二人を乗せた。
「ごめんなさい石塚さん。タクシーで帰ろうと思ったのに、父がまた職権濫用で命令したんでしょう?」
 運転席に乗り込んだ男に倉嶋は言った。
「社長に頼まれなくたっていつでもお送りしますよ。えーとJ病院に寄ればいいんですよね」
「どうもすみません」
 頭を下げた悠太に「いえいえ」と愛想よく笑いながら車を発進させた秘書と、バックミラー越しに眼が合った。この人もクラケンを知っているのだと、その一瞬の表情で悠太は察した。
「J病院・・有名なリハビリテーション病院ね」
 倉嶋が言った。
「あの、母が脳卒中起こして、リハビリしなきゃいけないんで」
「そう、それは大変ね」
 悠太は首を振った。
「根気良く頑張ればかなり回復するらしいから」
「私の祖母も五年前に脳卒中で倒れてリハビリをしたわ。片麻痺と失語症で」
 悠太の母親と症状が同じだ。
「回復したんですか?」
「年齢を考えればめざましい回復をしたんじゃないかしら。今も杖は必要だし、弁舌爽やかとはいかないけれど、生活への支障は少なくなったわ。ところで敬語はやめてくれる?」
「あ、はい」
 倉嶋は苦笑し、秘書は控えめに笑った。悠太はさっきから気になっていたことを聞いた。
「熱がありま・・ある?」
「え?」
「顔が少し赤いから」
 倉嶋は眉を少しあげ、こめかみに手のひらを当てた。
「目ざといのね。顔色はそんなに変わらないはずだけど」
「だから今日は車なんですよ。具合が悪いのにタクシーなんて社長が許しませんからね」
 秘書がちらっと振り向いて言った。
「過保護よ。私は小学生じゃないのに」
「でも志保子さんは熱を出すと少し子供っぽくなりますよね。普段の倍くらいよく喋る」
「ああ・・」
 倉嶋は肩をすくめて笑った。
「熱っぽいときに車に乗ると、高揚してしまうんです。光の反射を強く感じて、流れる景色がキラキラして見えるから」
「でも家に帰って休んだほうが」
「私の発熱は日常茶飯事よ。体調がひどく悪ければ送るなんて言わないわ」
 悠太の遠慮を封じるように倉嶋は言い切った。
「ほら、ここのケヤキ並木は紅葉も綺麗だけど、もう少したてば胸がすくほど鮮やかな新緑になるの」
 倉嶋はシートに背中をすっかり預け、ややだるそうではあるが、顔の表情は生色に溢れている。生まれて初めて電車に乗った子供のようにも見える。「ハンパねえ気取り屋」と彼女を評した宇田川は、こういう表情を知らないのだろうか。
 宇田川のことを考えると、つい「キス」を意識してしまう。倉嶋はどんな反応をしたのかと想像すると、なんだか息苦しくなってしまい、悠太は正面を向いた。
 悠太は今まで一人としかキスをしたことがない。
 野球部の練習に明け暮れていた去年の夏休み、三日間だけ貰えた盆休みに、数人の友達と一緒に海に行った。社交的なイケメンが一人いたせいで女子大生のグループと意気投合し、悠太は三つ上のお姉さんに「坊主頭がかわいい」と気に入られてしまい、誘われるままに彼女の車の中でキスをした。何もかもが初めてだった悠太は我を忘れて興奮し、段々エスカレートしてセックス手前までいったが、「ごめん、ゴムないし」と押しとどめられた。その後何度かメール交換をしたものの、再び会う機会もないまま自然消滅した。後にも先にもそれ以外の、そしてそれ以上の経験は悠太にはない。
「フェルマーの最終定理についてのノンフィクションは読んだ?」
「は?」
 倉嶋の唐突な問いに、悠太は眼を瞬かせた。
「フェルマーの最終定理について、聞いたことはある?」
「いや・・ないと思う、けど」
「十七世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーが書き遺した数学の定理よ。彼は命題だけを書き、わざと証明を遺さずにこの世を去ったの。それから三世紀半、地上で最も優れた頭脳の数学者たちが、証明に挑戦しては屈服し続けた。フェルマーの最終定理は数学界における、最も悪名高き超難関と言われたわ」
「はあ・・」
「本を貸すから読んで。あなたなら面白いはずよ」
 長い目尻に微笑みが浮かんだ。小難しい話題をいきなりふられて、戸惑い以外の感情が浮かばない。ずいぶん一方的な人だなあとも思う。だが悠太はこんな表情を誰の顔の上にも見たことがなかった。悠太に向けていながら、好意を示すためでも乞うためでもない、風が吹いて風鈴をひと鳴らししたような微笑。もし自分が彼女の熱烈な崇拝者なら、その表情に特別な感情のカケラを見出そうと躍起になるだろうと思った。


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コメント
こんにちは
毎日お邪魔させて頂いてます! 先日コメントを送ったのですがもしかして届いてないかも。。 スピンオフもすごくおもしろくて引き込まれてしまってます。続きがとっても楽しみです。 でもこのお話の主人公より、気になるのはやっぱり直己なんです。天敵以来すっかりはまってしまっています。キャラ紹介の『中学生の頃からお盛ん。』には思わず吹きだしてしまいました。香枝がからむお話も楽しみにしています!

[2010/06/11 10:50] URL | しおん #- [ 編集 ]

Re: こんにちは
しおんさん、コメントをありがとうございます!
先日もコメントを頂いていたのですが、拍手コメントだったもので、表示や返信の仕方がまったくわからずお返事できずにいました。申し訳ありません・・。
直己と香枝の、サクッと読める短い話などそのうちアップしようかと思っております。ちなみに直己は中学生のころからお盛んですが、一番のモテ期は大学時代でした(笑)
[2010/06/11 13:37] URL | KIKI歌野 #- [ 編集 ]

はじめまして
某官能小説サイトで作品を拝見してファンになりました。
このサイトを発見して、嬉しくて掲載されてる小説を全部一気読みしてしまいました。
恋愛もの以外も期待以上に面白かったです。
タダで読めてしまっていいのでしょうか。。。って気が引けるくらい。
どの登場人物もとても魅力的だし、言葉の使い方が綺麗で自然体で、心地よいです。
ますますファンになりました。もっともっと読みたいです。
応援してますので、これからも書き続けて下さい!


[2010/06/13 17:08] URL | みほ #cxq3sgh. [ 編集 ]

Re: はじめまして
みほさん、コメントをありがとうございます!
発見して来てくださる方が何人もいらしてとっても嬉しいです。
また掲載の拙作を全部お読みくださったとのこと、誠にありがとうございます。
私はあまり文章が上手ではなく、何度も何度も書き直してやっと見られる
日本語になるというレベルですので、おほめいただくと恥ずかしいのですが・・
でもありがとうございます(笑)
今後ともよろしくお願いいたします。
[2010/06/14 09:41] URL | KIKI歌野 #- [ 編集 ]


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