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KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
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KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


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  初めてのお方はどうぞ。このブログ内の小説ラインナップが一目でわかります。


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  小説のキャラ紹介です。「100の質問!」コーナーもあります。お時間のある方はぜひ


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  皆様へのお知らせとかお礼とか言い訳とか、いろいろ書いてあります。


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  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



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プリンキピア・マテマティカ(5)


 悠太が倉嶋の家に招かれたことは、数日後には学校中に知れ渡ったらしい。「海棠くん、オニクラのファンに嫉妬されてるよー」と青木が嬉しそうに報告してくれた。
「でも気にすることないけどな。天下の海棠家だし嫌がらせなんかされないよ。だいたい遊びに行くんじゃなくて何かの勉強会だろ? ま、倉嶋家は格下だけどオニクラは秀才だから、つるむ価値はあるよな」
 わかりやすい座標軸しかない青木は置いておくとしても、A組にも存在する倉嶋のファンの心理は複雑なようで、悠太に対してあからさまな敵対心は見せないものの、小さな悪意のジャブを繰り出してくるようになった。
 苦手な英語の時間に教科書を音読させられたとき、ただでさえひどい発音の上に単語を読み間違えてしまった。「ひでーな」と聞えよがしに吹き出した二、三人の笑い声には棘が含まれていた。廊下を歩けば「クラケンに似てるって得だよなー」と誰かの声が飛んでくる。
 倉嶋と同じ時間の電車に乗り、校門まで一緒に歩くというなかば習慣化した行為も、やめたほうが無難かもしれないと悠太は迷った。だが自分がいれば痴漢よけくらいにはなるだろうし、校門まで一緒に歩くあの短い時間を手放したくない。倉嶋を彼女にしたいとか熱烈に好きだとか、そういう感情よりは手前の、山中に咲く野の百合の造形の見事さをいつまでも見ていたいような気持ちが悠太にはあった。
 だがその朝は、「野の百合」などという気障な表現を使っている場合ではなかった。
「本日七時三十分頃、車両故障が発生したため、ダイヤが大幅に乱れております。お急ぎのところご迷惑をおかけし・・」
 アナウンスの口調のなめらかさとは裏腹に、すし詰めの車内は地獄そのものだった。手足を磔にされた上に肋骨を砕かれそうな圧がかかり、まともな呼吸すらできない有様だ。電車のドアが閉まる直前に飛び乗ったため、倉嶋が同じ車両にいるのかどうかもわからなかったが、ターミナル駅で乗客がどっと降り、なんとか少しは体が動かせるようになって一息ついたとき、「海棠くん」とすぐ後ろで声がした。悠太はネジを無理矢理回すように体を回転させて倉嶋と向かいあったが、向かいあったとたんに後悔した。近すぎる。「おはよう」と、混雑など存在しないかのような表情で挨拶をする彼女の吐息が喉にかかるほどだ。
「本は読み終わった?」
 距離が近いためか囁くような声で倉嶋が聞く。悠太は動揺を顔に出すまいと努力しながら頷いた。
「面白かった。最後のどんでん返しとか、実話じゃないみたいで」
 倉嶋は微笑んだ。悠太は話題を探した。横並びならまだしもこの体勢での沈黙には耐えられない。
「えーと・・宇田川は誘わないの」
「CPMに?」
「数学の成績はいいらしいけど・・その、仲があんまり良くないから誘われないって言ってた」
「本人が来たいのなら構わないけれど、そうじゃないでしょう」
 倉嶋の髪からは誘惑的な甘い香りがする。心臓の鼓動が倍加し、意志に反して固くなりはじめる股間に狼狽しながら、あの痴漢と自分との差異は紙一重に過ぎないと悠太は自嘲した。
「私があの人を誘わないのは個人的な感情のせいではなくて-----正直に言えばどんな個人的感情も私は持っていないけれど----向き不向きの問題よ。彼は数のロマンチシズムを追うタイプではなく、現実的な数字のほうに適性がある人だと思うから」
「お金とか、経済ってこと?」
「ええ。でもあなたは数学の持つ無類の美しさが好きなのだと、黒板の数式を見たときに感じたの。だから誘ったのよ」
 倉嶋は悠太の眼を平然と見つめながら話をしている。体が触れ合うこの近距離で、なぜ照れもせずそんな芸当ができるのだろう。対抗するように見返していた悠太は根負けして視線を左上方にずらした。
「ああ、そうね・・・見つめすぎるのは失礼だとわかっているけれど」
 倉嶋は少し笑って言った。
「他に見たいものがないの。我慢して」
 こともなげに発されたその言葉を、悠太は数日にわたって反芻する羽目になった。いったいどういうつもりの発言なのかと、しまいにはやるせない怒りさえ覚えながら。


 コレギウム・プリンキピア・マテマティカなる会が翌日に迫った金曜日、昼休みになるや、倉嶋はクラスメートに取り囲まれていた。一人が物理の参考書を片手に遠慮がちな質問をし、倉嶋がそれに答えると、我も我もと寄ってきて長いQ&Aタイムになるのは既に見慣れた光景だ。青木もちゃっかりその中に混ざっている。倉嶋は噛み砕いて教えるのがうまいが、あまりに幼稚な質問には「教科書を最初のページから読みなさい」とにべもない。悠太は青木に昼食に誘われる前に教室を出て廊下を歩いた。
「あ、ニセクラだ」
 背後からひそかな笑い声が聞こえた。「偽物のクラケン」の略だと即座にわかったので相当頭にきたが、相手にしたら負けだと自分に言い聞かせ、通り過ぎようとした。
「おっと、わりー」
 聞きなれた声に振り向くと、廊下に四つん這いに倒れた男子の傍らに宇田川が立っていた。
「わざと蹴ったんじゃないのよ。カンベン」
 宇田川は男子生徒の胸倉を掴んで立たせた。
「てかお前、人の名前くらいちゃんと呼べ? 小学生じゃねーんだからさ」
 驚きのあまり声も出ない様子の男子のネクタイを直してやりながら、宇田川は凄みのある笑顔で言った。だが悠太を振り向き「メシ行こーぜ」と言った顔は、もうケロリとしている。悠太の喉元に可笑しさがこみあげ、泣きたいような気分がじんわりと広がった。
 宇田川は校門の外に出て、悠太を路地裏の小さなラーメン屋に連れていった。小汚い店だが流行っているらしく、学生やサラリーマンで満席だった。悠太が大盛りラーメンと餃子二人前とご飯を注文すると、宇田川は呆れた顔になった。
「それ全部食う気?」
「昼に食いだめしなきゃ。家のご飯は量が少なくて」
「お代りすりゃいいっしょ」
「しづらいし」
「なんで」
 この男になら何を言っても大丈夫だと確信し、悠太は離婚や母の入院のことなど、内々の家庭事情を話した。黙って聞いていた宇田川は「ま、メシの量くらいちゃんと交渉しな」とだけ言いラーメンを啜った。
「そーいや明日だっけ、なんとかの会は」
「うん、フェルマーの最終定理の部分的証明がテーマになるらしいけど」
「何それ? わけわかんねー」
 悠太は覚えたばかりのにわか知識をかいつまんで宇田川に説明した。一見単純そのものであるフェルマーの定理は、下の通りに記される。

  Xn+Yn = Zn
  この方程式は、nが2より大きい場合には整数解をもたない

 n=2の場合、つまりX2+Y2 = Z2という二乗の式は「直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい」というピタゴラスの定理を表す方程式でもあり、例えばX=3、Y=4、Z=5のように、多くの整数解があることが知られている。
 フェルマーはこの二乗を三乗以上に置き換えることで、ピタゴラスの定理を悪夢の難関に変貌させてしまった。なぜなら証明すべきnが無限に存在するため、全てに敷衍できる法則を発見できない限り、永遠に完全証明には至らないからである。
 それでもこの定理は、時代を隔てた数人の数学者によって部分的に証明され続けてきたが、完全証明に至ったのはワイルズただ一人だけである。倉嶋に借りた本は一般向けに著されたもので、歴代の証明の詳細には触れていない。だが仮に触れていたところで高校数学しか知らない自分に理解できるとは全く思えず、悠太は明日が少し怖かった。
「わかんなきゃわかんないって言やーいいじゃん」
 宇田川は面白くもなさそうに言ってから、急にニヤッと笑った。
「あ、そか。オニクラの前でいいとこ見せたいってか」
「そういうんじゃないけど」
「けど何」
「一人だけわかんないのが、いたたまれない」
「じゃ、もっとわかってない誰かを連れてけばいい」
「え?」
「俺も行く。オニクラにそう言っといて」
 宇田川は断りもなく悠太の餃子を割り箸でつまみ上げ、口の中に放り込んだ。


 倉嶋に渡された地図によると、彼女の家は海棠家から500m足らずの距離にある。
 悠太の家までやってきた宇田川と肩を並べて倉嶋の家に向かった。深い赤の革のジャケットにジーンズを着こなした宇田川は格好いい。さすがは都会の高校生と感心してしまうが、襟のよれたTシャツに古いパーカーの自分のダサさ加減が際立つような気もする。それにしても、数学の会や定理の証明に興味があるとも思えないのに、なぜ一緒に来る気になったのだろうか。
「倉嶋さんに喧嘩売ったりしちゃ駄目だからな」
 悠太が何度目かの念押しをすると、宇田川は笑って流した。
「しないって。俺今日はお前の保護者だもん」
 高い塀に囲まれた倉嶋志保子の家は、瀟洒なつくりの白壁の三階建てだった。
「いらっしゃい」
 門まで迎えに来た倉嶋は、白いタートルネックのセーターにスリムな黒のパンツという姿だ。髪を後ろでまとめているため、普段より大人っぽく見える。玄関までの石畳を歩きながら、悠太から宇田川に視線を移したが、微笑みを保ったまま何も言わなかった。
 CPMの参加者は既に先に来ており、三十畳はあるかと思われるリビングルームで寛いでいた。眼鏡をかけた大学生らしい男女、ハーフっぽい男前の二十代の男、三十前後の年齢に見える地味な印象の男が二人いる。
「若いなぁ。高校生?」
「三年生かな? こんなとこに来て、受験勉強とかいいの?」
「志保子が連れてくるくらいだから、よっぽどすごい秀才なんだろうね」
 口々に話しかけられ戸惑う悠太をよそに、宇田川は「いやーまったく普通の高校生っすけどね。高等数学とか何も知らないし」とのんびりした口調で答えた。
「皆好き勝手なことくっちゃべるけど、ビックリしないでね」
 魅惑的な笑顔を振りまいた男前が言った。
「今日はオイラーについてやろうかと思ってる。といっても、いつも本筋から脱線しちゃったりするんだけど。オイラーはわかる?」
「虚数を使って、n=3について証明した人ですね」
 悠太は答えた。
「そう、フェルマーの時代から一世紀後、初めて証明の突破口を開いた天才だよ。もちろんたった一つのnを証明したに過ぎないけど、彼の天才ぶりは数学の分野だけに留まらなかった。もっと実務的な分野でも---」
「ほら、ヒロアキさんもう脱線してる。物理の話とか始めるつもりでしょ?」
 眼鏡の女性が笑った。
「話題を限定しちゃ面白くないよ。ある程度の縛りは必要だけど、心を解放して交流しなきゃ新しい発想は何も生まれない」
「でもワイルズは七年間も世間との交流を遮断したよな。証明の完成のために」
 地味なスーツを着た男が小さな声で言った。
「だから一度、証明を間違えたんだよ」
「どんな天才でも人間は人間」
 倉嶋が言った。
「人間と間違いは常にセットになっていて当然よ。でなければ生きながら神になってしまうわ。海棠くん、宇田川くん、座ってくつろいで。飲み物を持ってこさせるから」
「志保子、おいで」
 ヒロアキと呼ばれた男前が倉島を呼んだ。彼女が傍らに立って身をかがめると、男はその首筋に手のひらをあて、「ああ、やっぱり微熱がある」とからかうように言った。
「CPMとなると熱を出すね。わかりやすい体だな」
「興奮しているの。今日はたくさん喋るから、ますますあがるかもしれないわね」
 微笑み返す倉嶋の顔を見る悠太の胸に妬心が湧いた。

 それから一時間半、白熱した議論の内容は次第に数論的な専門性を帯びていき、悠太は半分も理解できなかったが、不可思議な笑みを浮かべながら黙っている宇田川も多分同じことだろうと思った。
「そろそろ休憩にしましょう」
 倉嶋志保子が言った。
「トイレどこ?」
 宇田川が聞いた。紅茶を飲み過ぎてしまったため、悠太も同じことを聞こうと思っていた。
「案内するわ。海棠くんもどうぞ。お手洗いは各階にあるの」
 居間を出ると、お手伝いさんらしき若い女性が「すみません、志保子さん」と声をかけてきた。
「皆様にお菓子をお出ししたいのですが、今奥様から急ぎの電話があって、私はちょっと出かけないと・・」
「私がやっておくわ。今キッチンに行くから」
 宇田川に一階のトイレを譲り、悠太は二階のトイレで用足しをしながら「面白いな」と呟いた。彼らの話がすべてわかるようになればきっともっと面白いだろう。
 トイレを出て一階に降り、居間に戻るかわりにキッチンを探した。何か手伝うことがあるかもしれないと思ったからだ。
「どういうつもりだよ?」
 人声が斜め前方から聞こえた。宇田川の声だ。
「どういうつもりって?」
「会長さんさー、わざと海棠に近づいてるだろ。クラケンに似てっから傍に置いときたいとか?」
「あなたは時々びっくりするような見当外れのことを言うのね。ところであなたは今日なぜここに来たの?」
 悠太は二人が話しているキッチンの入口の脇に立ったまま、中に入ることができなかった。カチャカチャという食器の音が響いている。
「話すり替えんな。何も見当外れじゃねーだろ。あいつにはクラケンの代理は無理だぜ。ずっと頭がいい。お前の家来にはなんねーよ」
「私は家来を欲しがったことはないわ」
「バカな金魚のフンが死んでも笑ってたくらいだから、口ではそう言うよな」
「もう帰りなさい。そんなことを言いに来たのなら」
「命令すんな」
 倉嶋は答えない。物音が途絶えた。
「・・・なんで逃げない?」
「逃げたらお菓子の用意は誰がするの?」
 倉嶋の声は平坦で、少し疲弊しているように聞こえた。
「手伝わないなら出ていって。行き先は玄関でも居間でもお好きなほうに・・・」
 悠太はようやく足を動かし、キッチンの中に入った。皮膚がビリビリするほどに全身の脈が激しく打っている。個人宅としては見たこともないほど広く、レストランの厨房のようなキッチンの片隅に、宇田川は倉嶋の両腕を掴んで立っていた。
「宇田川。手を離して」
 悠太は言った。思いのほか自分の声は落ち着いていた。
「喧嘩は売らないって言っただろ? 約束は守ってほしい」
「別に喧嘩じゃねーよ」
 宇田川は倉島の腕を離した。眼を一瞬伏せ、しれっとした笑みを浮かべながら悠太の顔を見る。
 喧嘩じゃない。
 悠太にもそれはわかっていた。
 宇田川は、倉嶋が好きなのだと。
 誰かにそう指摘されれば、不敵な笑顔で百万回でも否定するだろうその奥の奥底で、この男は彼女を欲しているのだと。


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