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KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
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KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


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  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



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八月のアンビバレンス・ラプソディー (3)
 翌日の木曜日の朝、香枝は両手に大荷物を抱えて部屋を出た。最低四、五日は沙織のマンションに避難させてもらう心づもりで、本人の了解も得てある。夜間にあんなヤツらがたむろっているかと思うと恐ろしくて帰宅できない。一人で部屋にいるのも心細く、昨日はろくに眠れなかった。どれだけ直己を恋ったか知れないが、意地が不安に鼻の差で勝ち、香枝は忍の一字を決め込んでメールも電話もしなかった。
 暗澹たる思いで出社する道すがら、直己を見かけた。会社の近所のオープンスペースのベンチに腰掛け、個人携帯で誰かと話している。破顔一笑し、「おーマジで?」と楽しそうな笑い声をあげた。
「あいつ帰国すんの? じゃ皆で同窓会やろうぜ。どっか店予約しとくからさ」
 香枝は気づかなかったフリをして通り過ぎた。やばい。駆けよって縋りつきたくてしょうがない。だが笑い声を聞くだけで癪に障る。アンビバレンツな感情に引き裂かれていると、追いついた直己に「ういっす」と声をかけられた。
「なにその大荷物。今日出張だっけ?」
「違う」
「重そっすね。持ってやろっか」
「結構」
「あっそ」
 直己は昨日のことなんかすっかり忘れた顔をしている。というより本当に忘れたに違いない。余裕の足取りで香枝を抜き去り、着信音を立てた会社携帯を取り出して仕事の話を始めた。
「どーも。お世話になってます。今週末の件なんすけど、鹿島田選手の誕生日が近いんでサプライズっぽくしたいんですよ。いやとんでもない。是が非でも次期契約とりつけたいんでこっちも」
 遠ざかっていく背中を見送る眼に涙が滲みそうになる。いや泣かない。絶対泣いたりするもんかと意を決し、香枝は肩に食い込む荷物を抱え直した。
 だがその日の仕事は新人並みの失敗の連続だった。ExcelのIF関数の定義を間違えてデタラメな市場分析をしたり、やっと完成した資料を削除してしまったりで、自分の尻ぬぐいで残業する羽目になった。しかも来週のスポーツイベントで配布するノベルティーの一部に、自社工場で混入したらしい小さな金属破片が見つかったため、一万個のノベルティーのダブルチェックを大至急行うよう、直属の上司であるシニアマネージャーの倉田から業務命令が下った。
「一万個? 大至急っていつまでですか?」
「今週中。つっても明日はもう金曜か。悪いけどお前が責任者ってことでヨロシクね」
「人員の確保は?」
「それもお願い」
 別名『キラー・パスの倉田』と呼ばれる上司は、至極気軽な調子で香枝の肩を叩いて去っていった。明日の夕刻、数十箱の段ボール箱が運び込まれ次第の作業開始になるが、数量から考えても夜を徹しての作業になるだろう。なんで次から次へと事件が起こるのだろうと頭を抱えていると、プライベート携帯にメール着信があった。外出先の直己からだ。
『あの荷物何?』
 気にしていたのか、と少し驚く。だが三分後にミーティングが始まるので事の仔細を説明している時間はない。『今日は沙織んちに泊るから』とだけ返信をした。
 会議にやってきた例の三人のアラサー女子連に「明日手伝ってくれない?」と声をかけてみたが「あたしら土曜から京都旅行なんだよねー。旅行前に徹夜とか無理」とあっさり断られてしまった。

 その夜、香枝は自宅とは逆方向の沙織のマンションで一晩を過ごしたが、彼女の歯ぎしりで飛び起きてしまい、枕を抱えてリビングのソファーに移動したものの全然眠れなかった。
 翌朝は「歯ぎしりがうるさい」「泊めてやったのにいちいち口うるさい」とつまらない口喧嘩に発展し、互いに顔を背けて出勤した。火曜は野宿、水曜も木曜も睡眠をロクにとれずフラフラだというのに、今日もいつ帰れるのやら見当もつかない。香枝は一番高いユンケルを二本買い、「これも経費で落としてやる」と呪いをこめて呟きながら薬局の前で一気飲みした。オフィスに戻ると、携帯の一件を無邪気にバラした例の派遣女子が、「籾山さーん」と香枝のデスクを覗いた。退社時間なのでバッグを手に持っている。
「今日は皆さん大変なんですよねー。頑張ってくださいねー」
「ありがと」
「籾山さんて宇田川さんと付き合ってるんですか?」
「は? 何?」
 香枝は眼を白黒させた。なんて声の大きい女だろう。近くにいるスタッフは全員聞き耳を立てているに違いない。
「いきなりごめんなさーい。でも聞いてこいって皆に言われちゃってー」
「付き合ってるわけないじゃん」
 香枝はキッパリと否定した。
「ハッキリ言うけど、変な噂立てられてめちゃくちゃ迷惑してるんで!」
「そうなんですかあ? なんかすいません。だって皆が」
「じゃお疲れ。いい週末を!」
 香枝は席を立つと、今しがたノベルティーの山が運び込まれた二十階の大会議室に向かった。直己の洞察は正しい。嘘の否定などしたくないと歯ぎしりをする青い自分が、処世の檻の中で地団駄を踏んでいるのがわかる。いつまで嘘をつき続けることになるのだろう。どちらかがマーケ以外の部署に配置換えになるまでか、あるいは転職、それとも別れるまでだろうか?
 三拝九拝して確保した九名のスタッフは既に作業を開始していた。個別包装されたグッズをビニール袋から出してチェックしては戻すという地道な作業を、最初こそ冗談など飛ばし合いながらやっていたが、時の経過と共に無口になっていき、十時間後の午前三時半に全ての作業が終了したときには全員の顔に死相が浮かんでいた。香枝は一人一人のスタッフに「ありがとう」と頭を下げた。
「今タクシー呼んだから。ミドリちゃんと永嶋は遠方だよね。向かいのホテル予約したから泊って。皆週末はゆっくり休んでね。ホントお疲れでした!」
「籾山さんは?」
「もうちょっとしたら帰る」
 こんな時間に帰宅して沙織を起こしたらまた喧嘩になってしまう。夜が明ければ恐怖は薄れるから、今日のところは始発で自分の部屋に帰って眠ればいい。香枝はだるい体を引きずって自分の席まで戻ると、デスクに突っ伏した。直己は今頃眠っているだろうか。昨日の朝以来一度も顔を見ていない。二度と会えないままあたしは死体になるかも・・と本気で怯えた一瞬の後、香枝は眠りの触手に全身を掴まれて意識を失った。


「香枝」
 後ろから両肩を掴まれ、体を揺すぶられている。夢と現実のボーダーラインに立った香枝は、自分の名を呼ぶ直己の声を靄の中で聞いていた。沼の底で手足をもがくような奮闘の末に眼が少し開いた。息が苦しい。どうやらデスクとキスをしているようだ。
「こんなとこで寝んな。家で寝ろ」
 左の耳に温かいものが触れた。直己の唇だ。
「・・何時」
 これは自分の声だろうか。老婆のようにしゃがれている。
「午前四時過ぎ」
「なんで」
 ここにいるの、と問いたいが、眠すぎて語尾がムニャムニャになってしまう。
「畑中から事情聞いた。まだお前が帰ってきてねーって心配して俺の会社携帯にかけてきたんで」
 畑中というのは沙織の名字だ。
 直己の手が香枝の両肩から腕に、肘の下へとゆっくりと降り、いたわるように撫でさすった。香枝の指の間に自分の指をいれ、力強く握り締める。温かい手が心地よく、香枝は重い瞼を閉じた。うなじを優しく唇で吸う音がする。
「直己・・人が・・」
「もう誰もいない」
 なかば朦朧としているのに、直己の唇が触れたところから皮膚が目覚め、こごった血が流れ始めていくような疼きが間歇的に走る。
 直己は香枝の上半身を起こし、キャスター付きチェアーを半回転させて自分に向かい合わせると、唇に唇を差し込むようなキスをした。体をねじ込ませて椅子に座り、両腕で香枝の体を抱き寄せる。香枝の両脚は直己の腰を挟む格好になり、まるで繋がっているときのようだ。
「もっと・・ギュッとして・・きつく・・」
 香枝は夢うつつでキスに応えながら、直己に甘えた。直己はそれに応じ、わずかな隙間もないほどに香枝を抱きしめて体を密着させた。幸福感の奔流が胸に流れ込んでくる。
「大丈夫か?」
 唇を少し離し、直己が静かに問う。
「今大丈夫になった」
「とか言いながら目閉じんな。起きろ」
 再び唇をあわせながら、胸を強めに掴まれる。
「あっ・・」
 頭の覚醒より欲情の立ち上がりのほうが早く、香枝は拒否のそれではない声をあげてしまう。
「何やって・・ダメ・・」
「あの大荷物の理由を俺に言わなかったのはなんで?」
 唐突な問いに、ドキッとして眼が開いた。沙織が喋ったのだろうか。きっとそうに違いない。直己は静かな表情をしているが、眼の中に得体の知れない光がある。香枝のブラウスの前を手早く開き、手を差し入れて愛撫を加えた。
「どうしてすぐ言わなかったのか教えて」
「あ・・ちょっ・・」
 こんな風に胸を揉まれて、説明などできるはずがない。
「だって、それは」
「だってもあさってもねーよ。お前ってつまんねーとこで意地張るのな」
 香枝の唇を軽く噛んで離し、複雑そうに笑う。額と額をくっつけると、形のいい鼻孔から溜息を押し出した。
「結構傷ついた。真っ先に言ってほしかったから」
「あたしだって言いたかったよ。でも」
「でも?」
「人気のない夜道歩くほうが悪いとか、マンションの立地考えないで借りたのもバカだとか、絶対言うと思ったし・・・」
「そりゃ言うっしょ。二度と危ない目に会ってほしくねーから」
「わかってる。でもあたし、怒られるより先に抱き締められたかった・・こういう風に」
 香枝の眼から涙が流れた。ぽろぽろと涙が湧いては鼻筋をつたい、顎まで垂れていく。疲れた。死ぬほど眠い。もどかしい。来てくれて嬉しい。
「あーよしよし。泣くな」
 直己の頬に浮かんだ笑みは「しょーがねーな」的な苦笑に近かったが、涙を拭ってくれる指や手のひらは優しかった。直己の唇が頬や目尻にそっと触れたので、香枝は陶然と眼を閉じた。直己の背中に腕を回し、自分から唇を重ねる。


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