FC2ブログ
ブロマガ

月刊ブロマガ価格:¥ 275

紹介文:

ブロマガ記事一覧

購入したコンテンツは、期限なしに閲覧いただけます。

プロフィール

KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
コンテンツの無断転載は一切お断りいたします。

メッセージ

コメ欄を閉じていますので、ご意見、ご感想、ご連絡などございましたら、こちらまでお願いいたします。

最新記事

最新トラックバック

月別アーカイブ

KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


   インデックス・作品紹介
  初めてのお方はどうぞ。このブログ内の小説ラインナップが一目でわかります。


  キャラ紹介
  小説のキャラ紹介です。「100の質問!」コーナーもあります。お時間のある方はぜひ


  KIKI歌野の日記
  皆様へのお知らせとかお礼とか言い訳とか、いろいろ書いてあります。


  ツイッター
  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

グリーン・グリーン(2)
「あのさ、怒ってるよねその顔?」
 焼酎のグラスをコースターの上に置くと、香枝はしびれを切らしたように聞いた。香枝の最寄りの駅前にある『マイタイ・ハワイアングリル&バー』という屋号とハワイ風のインテリアのこの店には、なぜか日本酒もイモ焼酎も置いてある。
「怒ってると思うの? なんで?」
 直己はカウンターに頬杖をつき、得意のポーカーフェイスで聞き返す。寝不足で強い酒を飲むと寝てしまいそうなので、ビールばかり飲んでいる。全く酔わない。
「だってさっきから無口じゃん」
 香枝は直己の顔を覗き込んだ。
「あたしが三宅っちと話してたから怒ったんだよね。違う? 他に理由思いつかない」
 三宅っちというのはさっきの男のことだ。香枝はこっちの喉が詰まるほど直球の物言いをする。
「ただの飲み友だよ。直己が怒ることなんか何もない」
「怒ってねー。感心してるだけ。お前には『ただの仲間』とか『ただの飲み友』とかの男がワンサカいるもんな。それ器用にさばいてんのは才能だよマジで」
「は? 何それ?」
直己のイヤミに呼応して香枝の顔に怒りが浮かんだ。
「じゃあ自分はどーなのよ。ケータイに山ほど女の名前登録してんの、あたしが知らないとか思ってる?」
「ほんとに知ってたら『山ほど』なんて言える量じゃねーってことも知ってるよな」
「うわ認めたし!」
 直己は携帯電話をパンツのポケットから出してカウンターに置いた。
「なんか疑ってんなら調べたら? 履歴とかも全部。つかなんでこっちが責められてんだか」
 その手のアドレスは全部消去済だが、あえて言ってやらない。
「まーまー香枝ちゃん、喧嘩はそのへんで」
 香枝と顔見知りらしい中年男の店主が、カウンター越しに話しかけてきた。
「こちら彼氏? イイ男だねー」
「どこがぁ?」
 香枝の口調は吐き捨てるようだった。
「お世辞言わないほうがいいよ。ただでさえドン引きするくらい自信家なんだから。仕事とかでも」
「だから何。お前が仕事で俺に敵わねーのは俺のせいじゃねっしょ」
「ほらこの発言! 聞いたよね? 今のマジで言ったんだよこの人!」
香枝は酔うと声が大きくなるので周囲の客が注視し始めている。直己は数枚の千円札をカウンターに置くと、彼女の腕を掴んだ。
「迷惑だっつの。来い」
「痛! 引っ張らないでよ」
 店の外に出ると、直己は彼女の腕を放るように離した。香枝は無言で歩き出し、直己も口を閉じたまま少し離れて歩いた。むせるような新緑の香りがする。人通りのない小学校の裏門の前まで来ると、香枝は立ち止った。
「言っとくけど先に口論しかけたのはあたしじゃないからね。だいたい仲良く喋ってたヤツの性別がたまたま男ってだけで、不機嫌になられる筋合いないよ」
「たまたま男って」
 直己は鼻で笑い飛ばした。
「夜の十時に違うフロアの人間がわざわざマーケまで来て、くっだらねー野球部の応援にお前を誘って、断られたら『デート?』ってどういう会話よ? あの男はお前に気があんだよ、少しだけどな」
「何言ってんの? そんなワケないじゃん」
「は」
「なにその笑い」
「気づかねーはずねっしょ。女は男の好意に敏感だから。でも知らんふりして内心でちょっと楽しんで、こっちからは焼餅も焼いてもらえてっつーのは、なかなかいい気な立場ではあるよな」
「はあ? なに・・・なんなのそれは」
「お前サバサバしたフリして相当ブリッ子な。それ自分でわかってる?」
 いい加減この毒舌を引っ込めないとヤバいと焦った一秒後、振りあげたバッグで腕を殴られた。
「てっ!」
「あんたと話すんのやだ! バカッ! 帰れもう!」
 これが二十六歳のセリフかと呆れながら、再びバッグを振りあげた手首を掴み、もう一方の手首も掴み上げる。小学校のコンクリート塀に彼女の背を押しつけ、自分の体で蓋をするように密着させた。
「やっ・・もー何!」
香枝は華奢な手首をねじって逃れようとした。二つの乳房が直己の胸を擦りあげる。濃厚な性の衝動が唐突に持ち上がった。
「痛いって。離してよ!」
「殴るから駄目」
「殴られるよーなこと言うからじゃん」
「ホントのこと以外言ってねー」
「な・・」
「反論は?」
「・・・」
「反論しないの?」
 香枝が黙ったのは、顔を寄せた直己の声音に甘さが混じり始めたせいだ。直己はつい意地の悪い笑みを浮かべてしまう。キスしようとすると彼女は顔をそむけたが、構わずに白いこめかみや耳に唇をつけた。耳は髄一の性感帯だ。耳全体を唇でなぞり、耳たぶを甘噛みする。香枝の体が一瞬震えたが、顔をそむけたまま反応を殺している。舌先を耳の穴に差し込んで攻めると、香枝は「あっ」と細い声をあげた。
「やめてよ。こういうのズルい」
「ズルい?」
「ズルいよ・・直己はズルい」
 その通りなので黙殺し、唇を暖かな喉から首筋へ、鎖骨まで降ろしていく。ボタンを一つだけ開けたブラウスから数センチ覗いたデコルテに舌を這わせると、香枝の胸が大きく上下した。すかさず開いた唇を胸の天辺にぴったり押し当て、布越しにじんわりと熱い息を与える。
「はっ・・ぁっ。や、やだ・・」
香枝が身をよじる。もう息が荒くなっている。直己は顔の高さを香奈のそれに合わせて囁いた。
「こっち向いて。キスしたい」
「・・・」
「向けよ、香枝」
 無駄な抵抗が可愛らしく、少し憎らしい。香枝は顔を正面に戻した。まなじりがぼうっと赤くなっているが、眼にはまだチラチラと反感の熾火が瞬いている。直己は優しく唇を吸った。何度も繰り返す。頑固に閉じた唇が溶けて緩んでいく瞬間を逃さずに唇の内側に舌を差し入れ、歯茎をゆっくりとなぞる。舌を探り、唾液を絡め取るようなキスをする。
「ん・・んっ・・」
 口腔を塞がれた香枝の喉から切なそうな声が漏れた。初めて彼女にキスをした四月の夜が蘇って直己の背に寄り添った。
「金がないから貸して」
 そう嘘をつき強引にタクシーに同乗させたあの夜、彼女をどうこうする意図などなかったが、強いて言うなら「嫌悪の視線」以外の何かが欲しかったのかもしれない。だが結局泣かせてしまい、後悔して抱きしめた数分後には股間が暴れ、道端で発情中の我が身が呪わしくなったものだ。だが今は違う。似たような状況でも彼女をほしいままに抱ける権利がこの手にあるのだから。
 きつく吸った舌を徐々に解放しながら顔の高度を少しあげると、香枝は喉をのけぞらせて直己の唇を追いかけた。手首を解放し体を抱き締める。少し遅れて彼女の腕が直己の背を抱いた。拳で肩甲骨を叩かれる。
「もー信じらんない。ホントにもう・・・」
「お前の部屋に行っていい? さっき帰れって言ったけど・・」
 赤みを増した耳にキスをしながら、五つの指先だけで左の乳房を包んだ。やんわりと揉み、その柔らかさを楽しむ。指の腹をすべらせ、一瞬だけ乳首をかすめさせる。
「あっ・・」
 香枝は前のめりになり、直己の手を掴んだ。
「ダメ・・人が来る」
「部屋に来てって言って」
「来て」
 背中をまた叩かれた。直己は香枝の腰を抱くと早足で歩き出した。夜の青葉の香りは、なぜこうも気持ちを急かせるのだろうと思いながら。
 マンションに着き、エレベーターのボタンを押し、ドアが閉じる前に香枝に抱きつかれ、首筋を強く吸われた。ゾクゾクする。体中の皮膚が微熱を持ったように過敏になっている。猛ったものの先から出た体液が下着を汚しているに違いない。

グリーン・グリーン(1)
「ちょっ・・ダメだよ。こんなとこでマズイって」
「誰も入ってこねっしょ。もう夜だし」
「というかモラルの問題で・・んっ・・」
 宇田川直己が密やかな会話を交わしている相手は、同僚の籾山香枝だ。時刻は夜九時半。シューズやアパレルを山ほど積んだスチールラックが連なる社内倉庫の一角でキスを交わし、彼女の体を撫でまわしている。
「ね、そろそろ仕事終了?」
 香枝は唇を離し、直己の手を牽制するように体をねじった。
「それ聞こうと思って追いかけてきたのにもー・・・」
「メールで聞きゃいいじゃん。こんなトコまで来っからこんな目に会うんだよ」
 直己は笑い、ブラウスの上から乳房に触れた。親指の爪で胸の頂きをカリカリ掻くと香枝はビクッと震えたが、両手で直己の手を押し戻した。
「ダメだってば。月曜朝イチの資料まだ作ってないんだから」
「あと何分かかんの」
「一時間」
「おせーよ。三十分」
「なに交渉してんの? じゃ四十五分」
「こっちはもう仕事終了。お前が終わり次第駅で集合な」
 交際歴五週間の二人の関係はまだ周囲には非公開なので、連れ立ってオフィスを出ることはない。香枝は振り切るように直己の腕から逃れた。上気した頬が果実のように瑞々しい。
「じゃ後で。先帰っちゃやだよ?」
「帰るどころか倉庫からも出れません」
 笑いながら自分の股間を一瞥する。香枝は照れ臭げな笑みをチラッと返しドアに向かった。パンツを好む彼女だが、今日は薄紫色のふわりとしたスカートを履いている。香枝が出ていくと直己は壁にもたれて大きな息を吐いた。強張ったものを握り「はい、どうどう」とおどけてみても興奮は治まらない。何しろ二週間もご無沙汰なのだ。先月マネージャーに昇格してからというもの多忙を極め、ここ一週間の平均睡眠時間は三時間にも満たない。待ち望んだ金曜の夜だ。今日は香枝とセックスをして泥のように眠りたかった。
(俺らってマジでつきあってるんだよなぁ)
 ラック上段のサンプル品を取り上げながらふと考える。
仕事に関しては最強運の保持者、常に大吉の直己だが、ここ一、二年の異性運はたまに凶、良くて中吉が関の山だった。殺人的に多忙なせいで誰と知り合っても刹那で終わってしまうのだ。下半身の欲求が決壊しそうになると、携帯のアドレス帳から適当な女子を選んで飲みに誘うのだが、電話口で罵倒されることなどしょっちゅうだった。
「二ヶ月もほっといて彼氏ヅラとかしないでよ!」
 最後に会ったのは二ヶ月前かと、怒鳴られて初めて思い出す。あたしと付き合うつもりなら一日一回はメールしろと要求したコもいたが、その後連絡を取っていない。要するに凶をひいたのは直己ではなく、直己と関わった女達なのかもしれない。

 籾山香枝に初めて会ったのは約一年前、直己が今の会社、大手スポーツブランドに転職した初日のことだ。ディレクターにフロア中を引きまわされ、挨拶をさせられたメンバーのうち、特に印象に残ったのが彼女だった。
「よろしくお願いします」
 笑顔で頭を下げた彼女に「よろしくっす」と応対したところ、反感を買ったのが一瞬の視線で伝わった。言葉にすれば「このデカい態度は何?」だと察するが、たとえ態度がデカくても、直己を見る初対面の女の視線はわりあい好意的なのが普通だ。勝気な眼に涼しい顔立ちが好みだったこともあり、彼女の存在は意識の片隅に留まるようになった。
香枝が有能なスタッフであり、長時間労働を厭わないワーカーホリックであることはすぐに知れた。形のいい脚をパンツに包み、敏捷な大股で歩く。スリムだがほどよい丸みのある身体つき。特に背中から尻にかけての曲線はセクシーと呼んで差し支えない。要するに無性にお近づきになりたいタイプなのだが、近づこうにも近づけなかった。彼女からオニのように嫌われてしまったためである。

 入社して一週間後、直己の歓迎会を兼ねた飲み会が開かれた夜のことだ。シニアマネージャーの行きつけだというその小料理屋は、初老の夫婦二人だけで切り盛りしており、どう見ても人手が足りなかった。香枝は腰軽く立ち上がり、「お待ちどー!」と飲み物を運んで手渡しながら座を盛り上げていた。明朗活発な彼女は、そこにいるだけで場のワット数が三倍は上がる重宝な存在だった。
「ねーカラオケいこーよカラオケ」
 店を出て夜の街をぞろぞろ歩いていると、彼女の陽気な声が背後で聞こえた。
「やですよー。籾山さんマイク握りっぱなしなんだもん」
「そう言うなって。籾山には俺の違うトコ握らせといてやっから」
「あたしの握力ハンパないっすよー」と香枝はおっさん社員の冗談を軽く流し、上機嫌で酔っ払っていた。
「並木もカラオケいくでしょ? ねーってば」
 後ろから腕を掴まれ振り向かされた。人懐っこい笑顔に見上げられ、思わずドキリとした。「並木」はマーケの若手で、後ろ姿が直己と似ているらしく何度か間違えられたことがある。香枝は眼をあどけなく見開き、「ごめん」と恥ずかしげに笑って手を離した。
(こりゃ可愛い)
 諧謔的表現なら「ウッ」と両手で胸を押さえて倒れるところだ。だが香枝の笑顔はすぐに儀礼的なものに変わった。
「えーと・・宇田川さんも行く? カラオケ」
「や、俺会社に戻るつもりなんで」
 直己はにべもなく断った。カラオケが嫌いということもあるが、いかにも義理で誘ったような口調がシャクにさわったせいでもある。
「会社? なんで?」
「調べもん思いついちゃって。再来週の社内コンペ参戦すっから」
「え、だって入社したばっかなのに」
「関係ねっす。そういや籾山サンの過去の採用企画見せてもらった」
「そーなんだ。どうだった?」
「これなら勝てると思った」
「え?」
「聞こえたっしょ」
 香枝は数秒の絶句のあと「すごいこと言うね」と言った。
「でもホントのことしか言わない。再来週の結果見りゃわかるよ」
「へえ、じゃ楽しみにしてるから」
 香枝の表情が硬質なものに変わる。強い視線で直己を射ると早足でそばを離れた。
その二週間後、直己は社内コンペの採用を勝ち取り、それ以降は負け知らずの驀進が続いた。各企画はふるいにかけられ、正式にプレゼンできるのは二、三人だが、香枝はいつも最終メンバーに残っては直己に負けた。
「籾山、顔やつれてんなあ。徹夜したんじゃね?」
 直己は悔しさを押し隠している横顔に笑って話しかける。彼女は答えない。
「徹夜するほどのモンでもねっか。小手先で作った感じだもんな」
「小手先でなんか作ってない。余計なお世話」
「ま、企画力はともかく、お前って根性だけはスゲーよ」
 香枝の色白の頬が色づき、彫刻的な輪郭の眼を引き絞った一瞥を投げてよこす。
「うるさい。お前って呼ぶなって言ってんじゃん」
 それ以上は言い返さず、ショートボブの髪をさっと振って歩き出す。香枝は直己に対してはいつも防御と敵愾心のシールドを被る。
 もっと怒らせてやれ。無視されるよりマシだ。
 好きな女子を苛め倒したガキの頃と変わらない精神構造のせいで、二人の関係は悪化の一途を辿った。だがわずか一週間足らずでそれは覆された。火曜日に勢いでキス、金曜日に誘惑してセックス、月曜日から交際開始。それが自分の手柄なのか、あるいは神の御業が働いたのか、直己はいまだにわからない。

 夜十時、ほとんど無人のフロアに彼女の笑い声が響いた。誰かと雑談を交わしている。直己はパーテーションに囲まれたデスクのパソコンで四半期の売上分析を見ている。倉庫で交わした約束の時間まであと十分だというのに、香枝は何を呑気に笑っているのか。
「明日来てよ。やっぱ籾山ちゃんがいねーと盛り上がんないし」
「やー悪いけど野球部の応援とか無理無理。土曜は死んだよーに眠る日なんだもん」
「そんなこと言ってデートじゃないのぉ?」
「あはは、違うから」
「否定に力がないとこが怪しい」
 名前はド忘れしたがこの声は営業部の男だ・・と直己は考えながら印刷アイコンをクリックした。近くのプリンターまで歩くと、香枝と男がいるのはやはりそこだった。
「うす。横浜のリテールの売上、めっちゃいい線いってんねー」
 笑顔で男に話しかけると、男は相好を崩して誇らしげな表情になった。
「でしょ。俺の担当なんすよ。なーんて自慢したりして」
「うん知ってる。来週あたり横浜に見学行こうかと思ってた」
「じゃ俺宇田川さんに同行しますよ。早速ですけど月曜とかどうすか」
「メールして。週末もチェックしてっから」
 こっちが名前を忘れていても向こうは当然のように知っていて丁寧語を使う。たぶん自分は有名なのだろうと特に感慨もなく思う。香枝は涼しい顔で黙っている。
(仕事は終わったのかよ? 終わったんならメールくらいしたらどーなんだよ)
直己は印刷物を取り上げ「じゃ」と笑顔で背を向けた。デスクに戻ったのと同時に、香枝と男の笑い声がまた聞こえた。胸の中が熱くなり、額がすっと冷たくなった。


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。