FC2ブログ
ブロマガ

月刊ブロマガ価格:¥ 275

紹介文:

ブロマガ記事一覧

購入したコンテンツは、期限なしに閲覧いただけます。

プロフィール

KIKI歌野

Author:KIKI歌野
物書き(♀)です。アダルト表現を含む物語もありますのでご注意ください。ふと訪れた方々が楽しんでくださればうれしいです。
コンテンツの無断転載は一切お断りいたします。

メッセージ

コメ欄を閉じていますので、ご意見、ご感想、ご連絡などございましたら、こちらまでお願いいたします。

最新記事

最新トラックバック

月別アーカイブ

KIKI歌野の、たあいないものがたり
小説を書いています。官能を含む恋愛小説、普通の小説をぼちぼち載せていきます。たぶんまあまあ面白いです(つまんなくても暖かい目で見守ってください・・笑)


  NEW!!☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 2012年8月
 直己×香枝の最新作『パーフェクト・ビューティー・オブ・ライフ』アップしました。

 ゴメンナサイ、今回は有料コンテンツですが、(1)のみ無料で試し読みしていた
 だけます。

  皆様から寄せられたご感想はコチラ → ★★

 
 2010年11月
 直己×香枝の第四弾『ラヴァーボーイの受難』アップしました。


   インデックス・作品紹介
  初めてのお方はどうぞ。このブログ内の小説ラインナップが一目でわかります。


  キャラ紹介
  小説のキャラ紹介です。「100の質問!」コーナーもあります。お時間のある方はぜひ


  KIKI歌野の日記
  皆様へのお知らせとかお礼とか言い訳とか、いろいろ書いてあります。


  ツイッター
  キャラなりきりつぶやきもやってますので、小説を気に入ってくださった方なら
  楽しめると思います。ぜひのぞいてくださいね(現在停止中・・・ごめんなさい)



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

天敵とあと一秒のキスを(2)
(なんでコイツと同じタクシーになんか・・・あー早く着かないかな)
 嫌いな男とくっついている状況がいたたまれない。大の男二人とバックシートに乗るともうキツキツだ。沙織に「悪いけど先帰る」とメールをしていた香枝は、いきなりハッと思いだして言った。
「あたし毛ジラミなんか持ってないからね! 持ってたこともないから!」
 酔っているため声量の調節ができない。タクシーの運ちゃんの眼がバックミラーの中で見開かれた。宇田川は爆笑した。
「お前の病歴なんか聞いてねえよ。あの男追い払うために言っただけっしょ?」
「で、でも、よりによって毛ジラミ選ばなくたっていいじゃん。なんか悪意みたいの感じるんだけど!」
「悪意? それどっちの話だよ」
 宇田川はシートに乗せた頭を傾けると、香枝を見た。
「お前俺のこと超キライだよな」
「え?」
「必殺ビームが出てんのお前の目から。勝ちたいのに一度も勝てねーからさ」
宇田川は香枝から視線を外さず、口の端を釣り上げて笑っている。
「なんでお前が勝てないと思う? ツメが甘いってのはもう言ったけど、勝ち負けにこだわりすぎて視野が狭いからだよ。俺は売るために企画を練るけど、お前は自分が勝つための企画を出す。それが違う。わかるか?」
「・・・・」
「もうちょっと成長してもいいんじゃね? いつまでもお子様の土俵で独り相撲してねーでさ」
「お子様の土俵って」
無遠慮な言葉に胸を抉られる。頭は宇田川の洞察を即座に認めたが、感情は別モノだ。
「なにそれ? めちゃくちゃ失礼なんだけど」
「あのね」
 宇田川は体ごと香枝のほうを向くと、身を寄せてきた。人のことは言えないが酒臭い。
「俺がマジで失礼になろうと思ったら、こんなもんじゃないっすよ。お前幼稚だから勘弁してやるけど」
「勘弁とかバカじゃない? いちいち上から目線がむかつくって言ってんの」
「上だもん」
「は?」
「俺お前より上だもん。反論ある? 負けっぱなしでヤケ酒飲んでたオジョーチャン」
「な・・」
「なあ、ヤケ酒ってどんな味よ? 俺わかんねー。何しろ勝ったことしかねーからさ」
 宇田川は嗜虐性をあらわにして笑っている。香枝は二の句が継げなかった。頭に血がのぼるどころか逆に血の気がひいていく。
「とめて・・ください。1人降ります」
 もう1秒たりとも話をしたくなかった。香枝は財布から万札を引き抜くと、助手席の背のポケットに差しこんだ。首都高の高架下で降りた香枝を宇田川は引きとめず、タクシーは走り出した。周囲は閑散としている。横手に金網に囲われた広い自転車置き場があり、人通りは全くない。タクシーが見えなくなると、香枝は金網に両手をかけて下を向いた。
「なんなんだよあいつ!!」
 叫ぶと悔し涙が溢れた。しゃがみこんで手で顔を覆う。嗚咽が飛び出した。指の隙間から涙がしたたり落ちる。
(許せない、許せない・・・殺してやりたい、あのインケン野郎)

 どのくらいの時間泣きじゃくっていたのか、香枝の意識にはなかった。長時間同じ姿勢だったため両足が痺れて感覚がない。薄手のセーターとインナーのみで上着もないので、少し寒くなってきた。
 凝ったスティッチングの茶色い革靴が眼の前に立った。
「あーあ・・」
 低く呟いた男の声を香枝はぼんやりと認識した。男は片方の膝頭を地面につくと、香枝の顔を覗き込んだ。香枝は驚愕して声がでない。
 宇田川の表情はひとことで言えば「あちゃー」だった。香枝は金網をつかんで立ちあがった。膝下が麻痺しているため体が大きく揺れる。
「ちょっ・・あぶねー」
 宇田川は慌てて立ち上がると、香枝の二の腕をつかんだ。反射的に振り払ったが、強い力で胴を引き寄せられる。酒とコロンっぽい匂いとかすかな汗臭さに、香枝は密着した。
「は、離してよ。くっつくなバカ!」
「離したら倒れるじゃん。なにお前、ずっとしゃがみこんでたの?」
「離せっ、セクハラで訴えるから!」
「わーった、わかった。落ち着けって。悪かった」
 宇田川は香枝の抵抗を封じ込めるように、腕ごと包んで抱き締めた。気性の荒い馬を押え込むカウボーイのようなしぐさだった。
「謝る。調子に乗って言いすぎた。めちゃ酔ってた。つか今も酔ってるけど」
「・・・」
「聞こえた?」
「・・・聞こえた」
「なら泣きやんでくれね?」
「うるさい。もう離してよ」
 香枝は自分を殴りつけたかった。この男の腕の中で無様に泣いているなんて悪夢だ。
「籾山って想像力あるよな?」
「えぁっ?」
 唐突に問われ、間抜けな声が出た。宇田川の腕から逃れようとする努力を一時停止する。
「お前の企画って甘いんだけど、アンテナの照準はスゲエと思う。分析力より何より想像力がねーと無理な技だよな」
「・・・」
「だから想像してみ。誰でもいいから好きな奴。そしたら落ち着く」
 宇田川の手が無造作に香枝の後頭部を掴み、自分の首筋に押しつけた。
「あ!」
 香枝は目をきつく閉じた。頭を触られるとものすごく弱い。背筋を何かが駆けのぼる。嫌悪感ではなかった。
「そ、想像って」
「好きな男くらいいんでしょ」
「・・・」
「じゃジョニデにしな。お前のパソコンの壁紙の」
 そんな事知ってるのか、と少し驚く。
 宇田川のもう片方の手は香枝の背中を抱いている。怒りが急速に収縮し、戸惑いと恥ずかしさに変わっていく。似合わない優しさがものすごく居心地悪い。叫んで逃げ出してしまいたかった。想像力と言われてもこれは宇田川だ。一見すらりとしているのにガッチリついた筋肉の感触が服越しに伝わってくる。暇を見つけてはジム通いをしていると誰かから聞いたことがある。ナルシストのやりそーな事だと、そのときの香枝は鼻を鳴らしただけだった。
 
 サワサワと風が鳴り、春の宵の濃厚な空気をぼんやり意識する香枝の眼は、すっかり乾いていた。そう、男の抱擁には確かに鎮静作用がある。香枝に彼氏がいたのはもう1年も前なので、感覚を忘れかけていた。
 宇田川の手が香枝の髪を撫でている。いったい何事だよと問いたいくらい繊細な手つきだ。宇田川のレザージャケットに涙と鼻水をつけまくった気まずさも、酔いの波に呑まれてどんぶらこと流れて消えていった。やばい。酔った。嫌いな男の腕と胸と手に。
「は・・」
 背中や髪を撫で続けられ、香枝は小さな吐息を抑えることができなかった。たぶん聞かれたと思う。
「もういい・・から離して」
 やっと言えた。でも本気で言っているのか自分でもわからない。
「・・・んか、やべぇ・・」
 宇田川が呟いた。
 眼の前の喉仏が上下したかと思うと、宇田川は急に顔を下げて香枝の眼を見つめた。今にも舌打ちしたがっているような唇、気の強い眼が戸惑ったように細められている。香枝は視線をその眼からそらすことができなかった。
 宇田川の顔が傾いた。目を伏せて香枝の唇を見る。唇同士が触れる直前に「嫌なら逃げろ」とやけくそのように早口で囁いた。
(嘘。なにこれ・・・)
 乾いた唇に自分のそれが覆われる。キスをしている。大型トラックがごうごうと頭上を通りすぎる、真夜中の道端で。
「塩辛い・・」
 宇田川は乾いた涙と鼻水の味を揶揄してフッと笑った。間近でこの笑い方をやられると、死ぬほど男っぽいことに香枝は気づいた・・というのは欺瞞で、実はとっくの昔から気づいていたのである。心臓が早く打ちすぎて息が荒い。香枝は下を向き呼吸を整えようとしたが顎を掬いあげられ、またキスをされた。もう湿ったキスに変わっている。歯を割って舌が入ってきた。動揺のあまりのけぞりそうになる香枝の首筋を支え、宇田川は情熱と技巧のバランスのとれたキスをした。
「ん・・んん・・」
 甘い声が香枝の喉から漏れる。自制の扉が音をたてて開かれた。香枝は宇田川の背に手をまわし受け身の姿勢を崩した。なんでこんなことになったのか。なぜ天敵とキスをしてるんだろう。どうしよう、どうしよう、やめなきゃ・・と頭が空回りを続けている。
 キスを繰り返す。互いの体をさする。左胸を掴まれた。
「あっ」
 セーター越しにぎゅっと揉まれたその痛みに、香枝は声をあげた。
「やだ・・ちょっと」
 宇田川の息は香枝よりも荒い。服越しでよくわからないが、この感触はたぶん勃起している。同僚の女とこんなことをしている意外なシチュエーションが興奮を煽るのかもしれない。だが力を加減する理性はきちんとあり、乳房を優しく包み込むような愛撫に変わる。上手だ。体が蕩けてしまうくらいに。耳から首筋にかけて宇田川の唇が降りていき、香奈の膝からガクンと力が抜けた。

天敵とあと一秒のキスを(1)
「マーケの仕事ってさ、要するに売れるしくみをつくるってことなんだよ。お前のプランはそのへんのツメが甘いんだよな」
 宇田川直己は、勝ち誇る表情を少しも隠そうともせずに言った。
「別にあんたのレクチャーなんか頼んでないから」
 香枝は内心で歯ぎしりしつつも、平静を装い屈辱を悟られまいとした。たった今社内コンペが終わったばかりの広い会議室からは、ディレクターやマネージャーがぞろぞろと出ていく。
「宇田川、期待してるからなー」
「今回も売上ドーンとあげてくれよな」
 わが社のホープ宇田川に、激励の言葉が次々と飛ぶ。負けた香枝は一顧だにされず、今やゴミと化した自分のプレゼンのファイルを抱え、会議室を出て早足で廊下を歩いた。
 今日も社内コンペで宇田川とガチンコ対決、今日もまた採択されたのは宇田川の企画だった。M社タイアップCMは、この不況下では珍しい大きな仕事だ。今度こそ自分がやりたかったのに、と香枝は悔しさのあまり泣きそうになる。
「今日チームの奴らと飲み会だけど、籾山も来るか?」
 宇田川が背後から声をかけてきた。からかうような響きがある。香枝が行くはずもないことを承知の上での誘いだ。
「結構。先約あるんで」
「あーあ、悔しがっちゃって、お前ってわかりやすいヤツ」
「お前とか呼ぶな。彼女じゃねーし」
 香枝は宇田川の前ではわざと女を捨てた物言いをする。親しいからじゃなく真逆だ。
「ま、修行積めば、そのうちお前の企画も通るって。いつの日かな」
 格好のいい鼻から息を押し出し、バカにしたように笑う。本当に嫌な奴だ。傷口を抉るようなことを平然と口にする。
 香枝は、エレベーターを待つために立ち止まった宇田川を置いて階段を降りた。怒りのあまり呼吸が荒い。考え抜きリサーチし尽くしたのに。徹夜して練り上げた企画だったのに。なぜいつもこの男にだけは勝てないんだろう? 

 香枝の会社は世間では有名なスポーツブランドだ。この不況で予算縮小はしてはいるが広告やイベントの数は多く、マーケティング部の若手は社内コンペでシノギを削る。
 宇田川は香枝より一つ上の27歳で、去年競合他社から転職してきた。実績とセンスを買われての「引き抜き」という噂だった。一目見たときから香枝はその自信過剰な表情を好きになれなかった。短髪でアスリートっぽい体型に押し出しのきく物腰と声、笑顔がチャームポイントだと自覚していそうな笑い方をする男。幾多もの人間を笑顔で踏みつけて、自分だけはのうのうと出世するタイプだ・・と初対面で何もそこまで意地悪く考えたのではないが、数多のコンペで負け続けるうちに、宇田川直己は香枝の「天敵」となった。

「むかつくー、もーやだー。会社辞めてやるー」
 香枝は同期の沙織を会社近くの居酒屋に呼び出して荒れて飲んだ。
「何言ってんの。この不景気に会社辞めてみ? 工場とかのバイトだって面接で落とされる時代なんだよ」
「あたしは大丈夫だもん。頑張って働いてキャリア積んできたもんっ」
 そう、あいつさえいなければ、30前に憧れのイベントマネージャーになることも可能だったのに・・・と考え、香枝は自分に舌打ちをする。
「『だった』とか言ってる時点で気持ち負けてるし」
 焼酎のロックを飲み干すと「ぐふー」と中年オヤジのため息をもらす。
「女子力の低下がとめどないねーアンタ」
 すっぴんで会社に来る女子力ゼロの沙織が冷やかした。
「あれっ、ウワサの天敵がいんじゃん。向こうの席」
 沙織が視線をやった先を振り向くと、仕事以外では1秒でも視界にいれたくない男が4つ向こうのテーブルにいた。同じチームの面々と愉快そうに喋っている。
「うわーマジ勘弁」
 香枝は怖気をふるって前に向き直り、通りかかった店員に「おかわりっ」と声をかけた。
「カノジョ元気いいねー」
「イモ焼酎のボトルあるけど一緒に飲まない?」
 向かいのテーブルの男3人組がこっちを見て笑っていた。どの顔も相当酔っ払っているようだ。
「飲む飲む! ありがとぉ!」
 香枝はマーケ畑だけあってノリが良く、酔っ払うと「人類みなお友達」状態に突入する癖がある。そのオーラは人々に伝播するらしく、結構キレイな顔(と人からは言われる)も手伝って、こうやって見知らぬ男達から酒を奢られた経験は豊富にある。とはいえ芯はガードが固いので、色っぽい雰囲気に持ち込まれることは少ない。
 だがその夜は失敗だった。ただ単に騒ぎたい気分だったのに、男のうちの1人がどうもしつこい。香枝の肩を抱き「口うつしで飲ませて~」と甘えた口調で迫ってくる。
「キャバクラじゃないんだから」
 はねつけても「あー怒ってる顔好みぃ~」と喜ばれる。閉口していると男は素早く「ホテル行かね?」と囁いた。その瞬間だけしらふに戻ったようにマジモードだった。沙織を含む他の3人はバカ話にゲラゲラ笑っており、こっちのことなど見ていない。
「頭冷やしなよ。水とか飲んだら?」
「ねー2人きりになろうよぉー・・・あん?」
 男が突然変な顔をして、香枝と反対方向に顔を向けた。宇田川が男の隣に立っていた。身をかがめて男に耳打ちしている。
「・・・だからさ、気をつけたほーがいいよ」
 きょとんとしている香枝に、宇田川は「早く病院行けよ? 恥ずかしがってる場合じゃねーから」と言った。どういう意味か問う前に、宇田川は背を向けて自分のテーブルに戻ってしまった。男は憑き物が落ちたような顔になり、5分後「電車あるうちに帰る」と言い置いて店を出ていった。
 香枝はしばらく考えていたが席を立ち、宇田川のテーブルまで歩いた。さっきは4,5人いたのに、今は宇田川の隣に、テーブルに突っ伏して撃沈状態の後輩の男が1人いるだけだ。宇田川は横に立った香枝を平静な表情で見上げ「おこんばんは」と言った。
「あんたなんて言ったの? あの人に」
「毛ジラミうつされたって言った」
「は?」
「お前とこないだヤッたら、毛ジラミうつされて迷惑したって言ってやったの」
「どっ・・なっ・・」
 香枝は口を開けたまま絶句した。その顔を宇田川はすごく愉快そうに見つめると、「感謝してる顔じゃねーな。助けてやったのに」と笑った。こんな場面だというのに、確かにこの男の笑顔には破壊力がある、と香枝の酔った頭は一瞬認めた。
「じゃ俺ら帰るワ。こいつ酒に弱すぎでさ」
 宇田川は「眠いッス・・」とムニャムニャ呟く後輩の頭をはたいた。
「もうタクシーに乗せるしかねっか。籾山、荷物持って」
「はい?」
「2人分の荷物持って。俺こいつ1人で精一杯」
 促されるままにビジネスバッグとリュックを持って店の外に出ると、ぐったりした男を抱えた宇田川は「あ」と言った。
「わり、タクシー代貸してよ。ここの勘定払っちゃったから、俺1000円しか持ってねー」
 香枝はムッとしながらも店内に再び入るとバッグを掴み、大はしゃぎしている他の3人をおいて外に出た。宇田川が後輩をタクシーに押し込んでいるところだった。4月にしては生温かい夜だ。排気ガスで充満した大通りに、気の早すぎる初夏の香りが紛れ込んでいる。
「籾山も乗んな」
 宇田川が言った。
「いい。あたし電車で帰るから」
「確か同じ方角だろ。いーからさっさと乗れ」
 有無を言わせないこの物言い。これが自分にはない要素なのだと香枝は悔しくなる。もしこいつが渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、「はい全員整列!」と通行人に命令を下せば、少なくない人間が従ってしまうだろう。現に今も、香枝はしぶしぶ後部座席に乗り込んでいるのだから。




上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。